こんにちは。行政書士の石濵です。今回は民法解説の続きとして、成年後見を受けるもの(成年被後見人)の遺言作成に関しての条文、証人及び立会人の欠格事由、それから共同遺言の禁止に関する条文の解説をします。ここまでで基本的な3つの遺言方式の解説は一端の区切りとなります。それではお願いします。

第937条(成年後見人の遺言)
① 成年後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において、遺言をするには、医師2人以上の立ち合いが無ければならない。
② 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書遺言は、その封紙にその旨を記載し、署名し、印を押さなければならない。

 この条文は民法第963条にある「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」という一文が前提となってきます。つまり、遺言を残せる状態にない方は、いくら遺言書を作成したとしても、その効力はひていされてしまいます。
 当該条文に出てくる”成年被後見人”とは民法第7条及び第8条に詳しく記載されています。条文を確認していただければわかりますが、精神上の障害によって事理弁識能力(通常備わっているべき理解力、思考力等)が欠けていると家庭裁判所に判断された人の事を言います。
 「じゃあ、事理弁識能力がなくっても、家庭裁判所に言わずに黙ってりゃいいじゃん」と思われるかもしれませんが、よく考えてください。遺言書とは後々の争いごとの発生を抑える為の物でもあります。後々「遺言者はあの時事理弁識能力を欠いでいた」と遺言無効を求める訴訟に発展してしまった場合、本末転倒となってしまいます。
 しかし、基本的には、事理弁識能力を欠く方は遺言を作成できませんが、本条でその例外を規定しています。
 病院等で治療を受けたり、何かの拍子に一時的にでも事理弁識能力が回復したと医者が認めるのであれば、一定の条件下の元で遺言を残せてしまうのです。但し、医師2名以上の立ち合いの元というとハードルが高く、実用している例はあまり聞きません。
 なお、公正証書遺言、自筆証書遺言と秘密証書遺言で医師の署名等の場所が違うのは、秘密証書遺言を他人に見せたくない遺言者への配慮です。

第974条(証人及び立会人の欠格事由)
 次に掲げる者は、遺言の証人または立会人になることができない。
1 未成年
2 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
3 公証人の配偶者、4親等内の親族書記及び使用人

 公正証書遺言等、立会人が必要となる方式の遺言を作成する際に、立会人にあれない人の例を挙げています。
 まず、未成年ですが、未成年は判断能力が未発達という理由で除外されています。ですが婚姻をしている場合は成年として扱われます(成年擬制)。
 次に、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族ですが、これらは相続の当事者になる可能性のある者ですので当然のように除外されます。
 最後に公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人ですが、これらは当該遺言書の作成に密接にかかわる方(及びその親族)です。証人、立会人は第三者性が求められるため、これらの者も証人及び立会人になることができません。但し、当該遺言書作成と一切関係のない公証人(及びその親族)でしたら問題はありません。

第975条(共同遺言の禁止)
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。

 一つの遺言書に2人分の遺言がなされている場合の不具合について考えると理由が見えてきます。
 例えば、当該2人が同時に亡くなるケースは極めてまれで、大抵は一人が亡くなってももう一人は生存しています。そんな時にその遺言はどのように扱うのでしょうか。
 また、遺言を撤回する場合はどうするの?一部に訂正をする場合はどうするの?と事務的に難解となるケースも非常に多いのではないでしょうか。
 様々な理由を勘案して、共同遺言を同一の証書ですることは一律禁止となっています。
 ケースによっては有効となるケースも有りますが、不確定要素が多すぎる為、あえて共同遺言を作成するメリットはありません。

 今回は以上です。またよろしくお願い致します。