今回は小規模事業者持続化補助金について説明します。
現在、補助金申請支援として全国商工会連合会が管轄している小規模事業者持続化補助金の支給申請をするために、近々に開業したお客様の経営計画書及び補助金支給申請の対象となる補助事業の計画書を作成しています。
この小規模事業者持続化補助金とは、事業の経営者が行っている事業の販路拡大、顧客の獲得や経営方針の変更等で新たな取り組みをする為の費用に関し、全国商工会連合会が一定割合の補助金を交付するというもので、使い道はある程度限定されてしまいますが、非常に有用な制度となっています。
この補助金はあくまでも経営者自身が自らの事業を見つめなおし、商工会事務局や商工会の紹介する中小企業診断士の先生と共に事業をもっと良くしていこうという趣旨となっています。なので行政書士や社労士が文書の作成代行という名目で携わるのは補助金の趣旨に反しているのですが、今回ご依頼を頂いたお客様は別事業での付き合いもある方なので、無償での経営計画作成補助として、経営計画の案を出したり、市場調査をするところからお手伝いさせていただきました。
小規模事業者持続化補助金を申請できるのは
当補助金は、あくまでも小規模事業者が近々の制度変更などに対応する為に事業の修正、販路の拡大等を行うことを目的としています。なので補助対象者は小規模事業者に限ります。
具体的には以下のようになります。
また、小規模事業者であっても医師や就業法人等は対象となりません。以下をご参考ください
さらに、以下の条件も満たす必要があります。
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
- 確定している(申告済みの)直近過去3年間分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
- 上記2つの事業において当該補助金の受付締切日の前10か月以内に先行する受付締め切り回(この補助金は複数の受付締め切り回があります)で採択を受けて補助事業を実施した者でないこと
ここまでを少なくともここまでを満たさないとこの補助金を申請することはできません。
どのような事業内容だったら申請できるの
上記の小規模事業に該当すればどのような内容でも当該補助金の申請ができるわけではありません。この補助金の交付対象となる事業(以下補助対象と記載)は以下を全て満たしたものでなければなりません。
- 策定した「経営計画に基づいて実施する地道な販路開拓の為の取り組みであること。あるいは販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性の向上)の為の取り組みであること
- 商工会、商工会議所の支援を受けながら取り組み事業であること
- 以下に該当する事業でない事
- 同一の内容について国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)するほかの制度(補助金、委託費等)と重複する事業
- 本事業の終了後、おおむね1年以内に売り上げにつながることが見込まれない事業
- 事業内容が射幸心をそそる恐れのあるもの、又は公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれのなるもの、公的な支援を行うことが適当でないと認められるのも
さらに、2以上の小規模事業が共同して申請をする場合は以下も満たす必要があります。
- 共同申請の場合には、連携する全ての小規模事業者等が関与する事業であること
補助の対象となる経費は
ここまで補助を受けることができる事業に関して解説しました。いくつかのハードルがあり、すべての事業が当該補助金を申請できるわけではないことは理解していただけたと思います。
さて、当然のことながら、補助の対象となりえる事業であっても、その事業に係る経費すべてに対して補助がおりるわけではありません。補助の対象となるのは以下のような経費に限られます。
①機械装置費等
あくまでも経営計画に基づく新たな販路拡大等に必要な機械装置のみで、現存する機械装置の入れ替え更新等では補助金を利用できません。
また、汎用性が高く、目的外使用になりえるテレビやパソコン、自動車、複合機等は対象となりません。
中古品も補助の対象とはなりますが、購入単価の制限やオークションの利用ができない等様々な制約があります。
➁広報費
パンフレット、ポスター、チラシ等の作成や広報媒体等を活用するために支払われる経費です。あくまでも補助の対象となる事業の広報に係る費用が対象であるため、単なる会社名のPRは対象外となります。
また、ウェブ広告に関しては広報費の対象ではありませんが、後述するウェブサイト
関連費にて補助金の対象となる可能性があります。
③ウェブサイト関連費
販路開拓を行うためのウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、運用をするための要する経費です。補助金の対象となる経費の中でこのウェブサイト関連費のみ特殊な扱いとなりウェブサイト関連費のみを補助金申請することは認められておらず、また認められた補助金総額の1/4がウェブサイト関連費とし手計上できる金額の上限となっています。
④展示会等出店費
新商品等を展示会等に出店又は商談会に参加するために要する経費となります。展示会の為の商品の運搬費や通訳、翻訳に係る費用も対象になります。
ただし気を付けなければならないことがあります。様々な自治体で展示会等のイベントに補助を出すケースがありますが、出展料の補助を受けた場合は当補助金の対象となりません。
また、販売のみを目的とした展示会への出店も対象外となります。
⑤旅費
申請した補助事業計画に基づく販路開拓を行うための旅費となります。展示場を出店した際の交通費等が含まれます。
⑥開発費
新商品の試作品や包装パッケージの試作開発に伴う原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる費用となります。
原材料を補助対象経費として計上する場合は、受払簿を作成し、原材料の受け払いを明確にしておかなければありません。
⑦資料購入費
補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入する為に支払われる経費です。
取得単価が税込10万円未満のものに限られ、また同じ書籍は1冊のみで複数購入はできません。
⑧雑役務費
補助事業計画書に基づいた販路開拓を行うために必要な業務、事務を補助する為に補助事業期間に臨時的に雇い入れた者のアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費となります。あくまでも臨時的なもので正規従業員として雇い入れる場合は補助の対象となりません。
⑨借料
補助事業遂行に直接必要な機器、設備等のリース料やレンタル料として支払われる経費となります。補助事業でない事業に使用する場合や通常の生産行為に使用する場合は補助の対象となりません。
⑩設備処分費
販路開拓の取り組みを行うための作業スペースを拡大する等の目的で、当該事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する、または借りていた設備機器等を返却する際に修理、原状回復するのに必要となる経費となります。
補助申請できる額に上限があり、補助対象経費総額の1/2が上限となっています。
⑪委託・外注費
上記①~⑩に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託・外注する為に支払われる経費となります。
補助の枠について
小規模事業者持続化補助金にはその事業者の特性によって、それぞれ申請枠があり、枠によって補助額の上限であったり補助率が変動します。
通常枠と賃上げ枠の両方に該当する場合は補助率、補助上限共に賃上げ枠の方が優遇されていますが、通常枠では必要でない資料の提出が必要になる等、申請ハードルも上がってしまいます。
希望する補助内容も含めてどの枠で申し込むべきかご検討ください。
申請手続きの流れ
以下、小規模事業者持続化補助金の申請の簡単な流れとなります。
申請手続きに必要な書類の確保
商工会議所のHPよりダウンロードすることが可能です。書式は随時更新されますので最新の書式を確認し確保してください。
経営改革書及び補助計画書の提出
商工会議所HPよりダウンロードした書式の中の経営計画書及び補助事業計画書(様式2・3)を一通り記入し、アポイントメントをとった後で地域の商工会議所提出に行きます。
多くの場合はここで書類の添削があります。もっともここで添削をパスたとしてもその後の審査で補助の獲得に至らないケースもある為、できる限り自分で納得のいく形の経営計画書、補助計画書を作成してください。
また、私は現在創業枠での申請をしていますが、創業枠の場合は創業前に“特定創業支援事業”によりう支援を受ける必要があります。具体的には中小企業診断士の先生に創業後の経営計画についてアドバイスをもらったり経営の方針やターゲットを拡大、縮小したり創業時に必要となる事柄のアドバイスをもらえます。
創業支援事業を受けるのはあくまでも創業前であることが必要ですが、開業届を提出していないのであればすでに創業準備を終えている状態でも構いません。
私は開業後の当該補助金獲得を視野に入れて“特定創業支援事業”を受け、その際に商工会に提出する経営計画書及び補助事業計画書の添削をお願いしまた。これは非常に有意義です。
商工会議所より事業支援計画書の交付を受ける
後日、地域の商工会議所より事業支援計画書が発行されます。これで申請に必要な書類は揃いました。
申請手続きに必要な書類を全て作成、提出する
経営計画書、補助事業計画書(様式2.3)は作成済みなのでその他の必要書類を作成し、郵送又は電子申請にて送付します。電子申請はJグランツを利用します。
申請の審査について
無事に書面を作成し申請を終えたとしても、審査の結果によっては補助金の獲得には至りません。審査は以下のような観点で行われます。
基礎審査
基礎審査の内容は隔日に満たしていることが条件となり、一つでも満たしていない場合はその時点で失格となってしまいます。
- 必要な提出書類がすべて提出されていること
- 補助対象者、補助対象事業、補助率等、補助対象経費の要件及び記載内容が合致すること
- 補助事業を遂行するのに必要な能力を有すること
- 小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取り組みであること
書面審査
基礎審査を終えたのちに書面審査に移ります。書面審査では経営計画書、補助事業計画書について以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価が最も高いものから順に採択されます。
- 自社の経営状況の妥当性
- 自社の経営判断を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか
- 経営方針、目標と今後のプランの適切性
- 経営方針、目標と今後のプランは自社の強みを踏まえているか
- 経営方針、目標と今後のプランは対象とする市場の特性を踏まえているか
- 補助事業計画の有効性
- 補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現性が高いものとなっているか
- 地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は経営計画の今後の方針、目標を達成する為に必要かつ有効なものか
- 補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴はあるか
- 補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか
- 積算の透明・適切性
- 補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか
- 事業費の計上、積算が正確、明確で、真に必要な金額が計上されているか
政策加点審査
書類審査を終えて、さらに行政の政策として補助したい事業に対して次のような加点審査をしています。この加点項目に該当すると考える場合は経営計画書の該当欄にそれぞれ必要事項を記載する必要があります。
パワーアップ型加点
パワーアップ加点には地域資源等を活用し良いもの・サービスを高く提供し、付加価値を上げるために地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う事業を対象にした地域資源型、地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による地域内の需要喚起を目的とする事業をを対象とした地域コミュニティ型の2種類が存在します。
赤字賃上げ加点
賃金引上げ枠に申請する事業者で赤字の事業者に対する加点
経営力向上計画加点
中小企業等経営強化法に基づく「経営向上計画」の認定を受けている業者に対する加点
電子申請加点
補助金申請システム(Jグランツ)を利用した事業者に対する加点
事業承継加点
代表者が60歳以上かつ後継者候補が補助事業を中心になって行う事業者への加点
東日本大震災加点
東京電力福島第一原子力発電所の影響を受け、引き続き厳しい事業環境課にある事業者への加点
過疎地域加点
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対する加点
災害加点
R4年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震によって災害救助法の適用を受け、局地的に多数の建物が崩壊するなど再建が極めて厳しい地域に所在する事業者に対する加点
事業環境変化加点
ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰による影響を受けている事業者への加点
今回はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。