こんにちは。行政書士の石濵です。今回も相続に関する民法解説の続きです。今回は相続人がいない場合、若しくはいるかどうかわからない(被相続人の生い立ちがわからない場合や相続人の生死が不明な場合等)場合にどのように対応すべきかの条文が中心となります。それでは宜しくお願い致します。
第951条(相続財産法人の設立)
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
被相続人が天涯孤独である場合や、相続人全員が相続の放棄をした場合は子の条文通り相続を管理する為の法人(相続財産法人)となります。法人というと仰々しい感じになりますが、自然人として相続財産を管理する人がいないので仕方ありません。これから管理人を定め、それを公告し、被相続人の債権者等はその管理人と話を進めることになります。
また、第959条で規定されていますが、相続財産法人の最終的な残余財産は国庫に帰属することになります。
第952条(相続財産の管理人の選任)
①前条の場合には、家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
②前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は遅滞なくこれを公告しなければならない。
②前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は遅滞なくこれを公告しなければならない。
相続財産の管理人の決め方を定めた条文です。被相続人の利害関係者又は検察官から請求があれば、家裁は相続財産の管理人を選任しなければなりません。逆に言えば請求が無ければ管理人を選任しなくても良いのですが、大抵の場合は何らかの利害関係者がいるものだと思った方がよいでしょう。
また、②では家裁が相続財産の管理人を選定したら遅滞なく公告しなければいけない旨が記載されています。公告方法までは指定されていないため、官報掲載の方法でなくても構いません。
第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第27条から第29条までの規定は、前条第1項の相続財産の管理人(以下、この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
第27条から第29条までの規定は、民法上の管理人の規定となっています。ちなみに第27条では管理人の職務の内容。第28条では管理人の権限、第29条では管理人の担保提供と、権利人の報酬について書かれています。
第954条(相続財産の管理人の報告)
相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
特に解説の必要のない、読んだまんまの条文です。一般的な管理業務と言えると思います。
第955条(相続財産法人の不成立)
相続人があることが明らかになったときは、第951条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
相続人がいることが明らかになった場合は相続財産に対する責任の所在がはっきりしている為、わざわざ法人をつくってそこが管理する必要はないことになります。条文中「成立しなかったものとみなす」という文言はそのまま、当該法人なんて初めから存在しなかったものとして扱うという意味です。
但し、後半に、「相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない」とあります。これは、管理人と契約をした相手方を保護する為のもので、相続人と契約の相手とで、例え当該法人が初めからなかったとは言っても管理人がした契約等を遵守する必用があります。
第956条(相続財産の管理人の代理権の消滅)
①相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をしたときに消滅する。
②前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
②前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
何らかの理由で相続財産の管理人が指定されている状態の時に相続人がいることが分かった場合の対処法について記載されています。条文では、相続人が相続の承認をした時に管理人の代理権が消滅し、その後遅滞なく(なるべく急いで程度の速度感)引継ぎをする必要があることが書かれています。
今回はここまでです。次回も引き続き相続人の不在についての条文の解説を行いますので宜しくお願い致します。