こんにちは。行政書士の石濵です。今回は相続に関する相続の解説の続きを行います。今回も遺言に関する相続ということで、遺言の効力に関する条文の続きとなります。

第990条(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

 包括受遺者とは、割合的(10割含む)に遺贈を受ける人の事です。例えば受遺者から「私の財産の1/3を遺贈するよ」というように、物品又は権利を個別に指定しないで遺贈を受ける方がそれに当たります。
 そのような遺贈の場合は財産の良い面だけでなく悪い面も引き受ける場合があります。例えば、上記の例で言えば、遺贈者の財産の中に借入金の返済義務があれば、受遺者は割合に応じて(上記例では1/3)借入金を返済しなければなりません。

第991条(受遺者による担保の請求)
受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件付の遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様とする。

 受遺者を保護する規程です。「遺贈が弁済期に至らない間」ですが、そもそも贈与をする際に遺贈者は贈与の条件として、時期を指定したり、条件を付けることができます。「遺贈が弁済期に至らない間」とは、受遺者が贈与の契約を締結したは良いが、指定時期以前であったり、条件を満たしていない場合等、効力が発生していない状態の期間の事です。
 条件を満たしていない間は、受遺者でく遺贈者が遺贈物を保全することになりますが、受遺者が遺贈物を破壊してしまったり勝手に売却するようなこともあり得ない事ではありません。
 そのために、受遺者が遺贈者(まだ実際に遺贈していないので遺贈義務者ですね)に担保を請求できるという規定です。なお、担保の価値に関しては特段の規定はありません。

第992条(受遺者による果実の取得)
受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 一般的には果実とは”くだもの”という認識をされます。場合によってはしょぶ物の実の部分全般や野菜等にも使用される表現かとは思いますが、当該条文(というか民法上)で果実といった場合、”該当する物(又は権利)を行使して得られる成果物”の事を言います。例えば金銭債権があった場合の利息や、不動産があった場合の家賃なんかのことです(当然畑があれば、畑でできたくだものも果実です)。
 特段遺言者に指示が無ければ、権利が発生した段階で果実を取得することができるようになることが記載されています。

第993条(遺贈義務者による費用の償還請求)
① 第299条の規定は、遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を支出した場合について準用する。
② 果実を収取するために支出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。

 第299条は留置権者の費用の償還請求についての条文となります。留置権とは義務を果たさない相手の所有物を自らの手元においておける権利(相手に心理的圧迫をかけて早く義務を果たさせようとするのが狙いの権利)のことです。第299条では、留置権者が目的物に対し必要費や有益費を支出した際には、所有者に対し費用を請求できる旨が記載されています。①では、その規定を遺贈義務者と受遺者の関係にも当てはめることが記載されています。
 ②では、果実を収取する費用に関しても請求ができる旨が記載されています。なお留置権では、果実は義務を果たすための弁済として留置権者が優先的に受け取ることができるという規定になっています。

第994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した時は、その効力を生じない。
停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 遺言にて、遺贈する旨を記載したは良いが、さて遺言を実行するにあたり受遺者がすでに亡くなっていたという場合に適用される規定です。なお、受遺者、受贈者が同時に死亡した場合は本条文には当てはまらない事となっています。
 後半は、遺贈に際し、特別な条件等が付されていた場合の話です。条件を成就する前に受遺者が亡くなってしまった場合も前半と同様に効力を生じない事になっています。

今回はここまでです。また次回もよろしくお願い致します。