2020年 民法大改正完全施行
こんにちは。行政書士の石濵です。2020年4月1日に改正債権法、相続法が完全施行されました。これはニュースでもよく耳にする機会があったので改正されたこと自体は知っている方が多いと思います。
民法も他の法律と同じように時代に合わせて少しずつ変化していますが、これほどの大改正は昭和55年の大改正以来とのことです。なぜ、このような大改正に至ったのでしょうか。
大きな理由としては、平成25年に違憲との判決が出た、非嫡出子の相続分規定に関する改正が非常に大きな役割を果たしました。(平成24年(ク)第984号、平成24年(ク)第985号、平成25年9月4日 大法廷 決定)
旧来の民法では非嫡出子(法律上の婚姻関係の無い男女から生まれた子)と嫡出子とでは法定相続分がじつに2倍もの差がありました。どちらも同じ実の子なのにです。時代劇なんかでは差別の対象となっているような表現がありますが、2000年を超えた平成の世の中でそのような差別があったことに驚きです。
多分ですが、多くの人が長い間改正前の法律(旧民法第900条4号但し書き)に違和感を持っていたことでしょう。それが平成25年に改正されるにあたり、国会で、「他の民法も時代錯誤な部分があるのでは」との考えが広まり、債権法、相続法を中心に今回の大改正に至りました。
ですが、そもそもの所、普通に生活していたら法律の条文を読む機会なんてありませんよね。恥ずかしながら僕も行政書士になるまでは民法の条文を読むことはほとんどありませんでした。今回から数回に分け、民法の中でも殆どの方が知っておくべき「相続」に関する法文を簡単に解説したいと思います。
なぜ、法律知識が必要なのか
民法条文における「相続」部分とは、民法全文1050条のうち第五編である882条から一番最後の1050条までを指します。その中でも第1章から第9章まで分類されています。相続に関する民法だけでもこれだけボリュームがあるのですが、実際に身内が亡くなり相続を実行する際には税法であったり他の法律の知識も必要になってくる為民法だけを知っていれば相続に関する事がすべて理解できるわけではありません。
ですが、最低限の知識を押さえておかないと、相続の際に自らの権利を主張できませんし、相手の主張に反論することもできません。
とても有名な法の格言に、法の不知はこれを許さず というものがあります。これは刑法第38条(故意)の諺です。以下、刑法第38条を見てみましょう。
刑法第38条(故意)
①法を犯す意思がない行為は、罰しない。但し、法律に特別の規定がある場合
は、この限りでない。
②重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪にあたることとな
る事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
③法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったと
することはできない。ただし、情状により、その罪を軽減することができる。
①③に注目してください。法を犯す意思がなく、また法律を知らなかったとしても、祖の事のみをもって免責されないことがしっかりと明記されています。(②は、意図せずにした行為の結果、重い罪に当たるような行為となってしまった場合に、その結果のみをもって重い罪を適用することはできないという意味です。)
もちろん法律を知らない事イコール必ず不利益な事態になるという事ではありません。基本的には人間みな助け合いながら生きていますし、その都度有識者に尋ねればよいのかもしれません。ですが、ちょっとした知識があれば、リスクを未然に防げるかもしれません。「なんとなく聞いたことがあるなぁ」くらいの記憶があれば後で調べることもできます。ですが完全に何も知らないと後で調べ直すこともできません。一度考えてみてください。
また、条文に乗っていない事柄でも、一旦裁判所が判断した事柄に関しては、それを適用して裁判所が判断することとなります。これを判例法と言います。判例六法等で確認することもできますが中々に困難です。ここまで来ると有識者に相談したほうが良いと思います。お近くの、又は知り合いの弁護士や司法書士、行政書士にご相談されることをお勧めします。
いかがでしたでしょうか。次回より、各条文を見ていきましょう。宜しくお願い致します。