こんにちは。行政書士の石濵です。今回も前回に引き続き、相続に関する民法の解説をします。内容は遺言に関する条文解説の続きです。
 それでは宜しくお願い致します。

第1006条(遺言執行者の指定)
① 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
② 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なくその指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
③ 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

 まず、遺言執行者とは、遺言に記載されている内容を円滑に行うための者です。遺言者は必要があれば遺言で、遺言執行者を指定することができます。ということは、逆に言えば、遺言執行者を指定しない事も出来ますし、その場合でも相続人が必ずしも遺言執行人を選任しなくてはいけないわけではありません。
 遺言を実行するうえで取りまとめる人が必要な場合や、所定の手続きを相続人全員で行う際に多忙で対応できない者がいる場合、争いが発生する可能性がある場合は確かに必要かもしれませんが、相続人全員が協力して相続に関する諸手続きを行うことが可能である場合は費用面を考えると必要ないケースも見受けられます。
 詳しい事が知りたければ、最寄りの司法書士や行政書士の先生に一度確認してみるのも良いかもしれません。
 さて、条文の内容ですが、①では遺言にて遺言執行人を指定することや第三者に指定を委任することができる旨、②では指定の委託を受けた者はちゃんと遅滞なく遺言執行人を指名して相続人に連絡する旨が、③は遺言執行者の指名の委託を受けた際に、氏名したくない場合の対応について記載されています。

第1007条(遺言執行者の任務の開始)
① 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
② 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

 前条の続きですね。無事に遺言執行者が決まったときの対応として、①では就任後すぐに実務に移る旨、②では実務を行う際に遺言の内容を相続人に通知する旨が記載されています。

第1008条(遺言執行者に対する就職の催告)
相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承知するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。

 遺言執行者に指名された方がすぐに「よし、遺言執行者になろう」となればよいのですが、簡単にいかない場合もあります。なかなか返事を得られないときは、決断に必要な相当の期間をさだめ、遺言執行者に指名された方に「やりますか、やりませんか」と問いかけることができます。それでも期間内に返事がない場合は「遺言執行者をやる」と返答したのと同様に扱うことになります。

第1009条(遺言執行者の欠格事由)
未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

遺言執行者になれない場合について記載されています。この条文に在る「未成年・破産者」は遺言執行人になることはできません。

第1010条(遺言執行者の選任)
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

 遺言執行者に指名されたものが辞退した場合は家庭裁判所にて新たに遺言執行者を選任することができます。
 但し、利害関係人(相続人や当該相続に一定の関係のある者)の請求が必要です。必要ない所に勝手に裁判所が遺言執行者を選任し、対応させることはできません。
 なお、遺言によって遺言執行者を選任する旨の記載がなくとも利害関係人の請求により家庭裁判所が遺言執行者を選任することももちろん可能です。

いかがでしょうか。今回はここまでとします。また次回もよろしくお願い致します。