行政書士の石濵です。今回は2020年6月より食品衛生法等の一部を改正する法律の施行によって、ほぼすべての食品事業者はHACCP(ハサップ)の手法を導入しなければならなくなりましたので、HACCPの解説や、今後どのようなことが求められてくるかを解説します。
HACCPってなんだろう
HACCPとは一言でいうと「食品の安全性を確保するツール」です。もう少し突っ込むと、「原材料や製造工程での危険を明確にし、これを重点的に管理することによって食品の安全性を確保するツール」です。例えば、製品に異物が混入した時に、HACCP又はそれに準ずるツールがなければ原因の追究が非常に困難です。ひとつずつ当時の行動を思い返し、「そういえば、あの時・・」という結果にたどりつくことすらできずに、ましてや原因への対策まで着手することはできないでしょう。
そんな時にHACCPを導入しあらかじめ危険を明確にしていれば、原因特定に非常に役に立つはずです。それどころか事前に危険を避ける対策を実行していれば今回の異物の混入は発生していなかったのかもしれません。
HACCPの歴史
HACCPの歴史ですが、もともとは1960年代に宇宙食などの食品の安全に関する規準でとしてNASAが構築したものです。それを原型として、FDA(アメリカ食品医薬品局)が取り入れたことをきっかけとしてカナダ、ヨーロッパに広がり、今ではグローバルスタンダートな食品の安全に関する基準として確立されています。厚労省のHPにも詳しく記載がありました。興味がある方はご一読ください。
厚労省のHPはこちら
具体的にしなくてはならない事
HACCPが食品の安全を確保するツールであり世界的に権威のある安全に関する基準であることはお判りいただけたと思いますが、具体的には何をすればいいのでしょうか。
まず、各機関によってHACCPの認証を受けている施設は今まで行ってきたことを継続して行えばよいでしょう。そのような認証を受けていない施設は、まず、当該施設が次のどちらのケースに当たるのかを確認してください。
A ・1施設において食品製造又は加工に従事する者が50人を超える事業
・又は下記Bに当たらない事業所
B ・1施設において食品製造又は加工に従事する者が50人未満の事業所
・当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
・一般衛生管理の対応で管理が可能な業種等(食品包装業者・食品運搬
業者等)
Aに当てはまる事業所は「HACCPに基づく衛生管理」を行わなければいけません。具体的にはコーデックス(食品規格委員会)が定める12手順を順守する必用があります。12手順は以下のようになります。
①HACCPチームの編成
②製品説明書の作成
③用途及び対象者の確認
④製造工程図の作成
⑤製造工程図の確認
⑥危害要因の分析(俗にいう原則1)
⑦重要管理点(CCP)の発見(原則2)
⑧管理基準(CL)の設定(原則3)
⑨モニタリング方法の設定(原則4)
⑩改善措置の設定(原則5)
⑪検証方法の設定(原則6)
⑫記録の文書化と保管方法の設定(原則7)
また、Bに当たる事業所は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行う必要があります。コーデックスの12手順を全て遵守することは非常に困難であることからHACCPの手順をできる限り取り入れましょうということで上記④⑥⑦⑧⑨⑩あたりが必須となってきます。
ですが、そもそもの所HACCPの手順の導入はあくまでも衛生面の向上にあるわけなので、小規模事業所でも手間にならない範囲で導入してみてはいかがでしょう。
どうでしょうか。次回以降に12手順の具体的内容を説明します。