こんにちは。行政書士の石濵です。先日、友達と久々にパチンコ屋さんに行ったのですが、店内の雰囲気がガラッと変化していて大変驚きました。
 今って店内でタバコが吸えないんですね。5年くらい前はどこのパチンコ屋さんでもたばこの煙が凄くって、わざわざ普段着じゃなく古いジャージを着て行ってたのですが、今では稲花粉の厳しい外と比べて(稲アレルギーなんです・・)店内の空気がとてもおいしく感じられました。
 あと、玉がコンピューター管理なんですね。ドル箱に球を詰め、それを店員さんが何度も搬送して大変だなと思った記憶がありますが、今ではパチンコはおろかスロットも各台のコンピューターで管理していました。もちろんそうじゃないお店もたくさんあるのでしょうが、昨今の働き手不足を鑑みると当然の推移なのかもしれません。大量のドル箱が並べられている様子を見て「うわースゲー」と思うようなことはもう無いのかな?少し寂しいです。

 さて、以前当ブログにて刑法第185条で規制されているギャンブルであるパチンコ店がなぜ営業できるのかを書きました。

ハマログ ギャンブルについて①【パチンコ】

 様々な法令の目を、涙ぐましい努力によって掻い潜り、賭場としてではなく、「風営法第2条1項4号に規定するぱちんこ店」として営業しています。
 ですので、単純に営業の事だけを考えてお客さんが喜ぶサービスの提供が出来なかったり、不便を強いたりしてしまう事があります。先のパチンコ屋さんの全面禁煙も不便に感じるお客様も少なくないのではないでしょうか(まあ、これは2020年4月に施工された改正健康増進法によるもので、パチンコ店以外の不特定多数の集まる場を提供する業態であればほとんどの施設で影響がありますが)。
 今回のブログでパチンコ屋さんのお客様が望んでいる行為がなぜできないのか、それが法規制によるものなのかパチンコ店の怠慢(笑)又は別の理由によるものなのかを説明したいと思います。
 今回はわかりやすくQ&A方式で行きますね。

ぽちんこ屋さんでやってほしいのに実現できていない事Q&A

Q① お酒を飲みながらパチンコやりたいです。海外カジノでは実現しているのに何で日本ではやらないの?酔った客の相手が面倒だから?

A 風営法には直接記載はありませんが、私の住んでいる愛知県では条例(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例)で以下のように定められています。

第9条(風俗営業者の遵守事項)
中略
2 前項の規定によるほか、法第2条第一項第四号の営業(まあじやん屋を除く。)を営む風俗営業者にあつては次に掲げる事項を、同号のまあじやん屋又は同項第五号の営業を営む風俗営業者にあつては第一号及び第二号に掲げる事項を遵守しなければならない。
 一 正当な理由がなくて、客の入場若しくは遊技を拒み、又は遊技を制限しないこと。
 二 営業に関し、賭博類似行為その他著しく射幸心をそそるおそれのある行為をし、又は営業所で客にこれらの行為をさせないこと。

 三 営業所内で客に飲酒をさせないこと。

 少なくとも愛知県では条例で定められているため不可能です。というより、他県でも同じような条例が間違いなくありますので、気になった方は確認してみてください。この条文を見ると、持ち込みや景品となっている酒類を営業所内で飲むことも禁止されています。最も違反となるのはパチンコ屋側となりますので、客側は少なくとも当該条例には抵触しません。多分つまみ出されるとおもいますが。

Q② 景品の換金行為が禁止なのは理解しているけど、高級ブランド品とかバイクとかが景品にあるとテンション上がらない?1日に20万円(分の景品)くらい勝つことあるじゃん。「パチンコで勝ったからバイクもらってきたわ」とかかっこよくない?

A できません。根拠は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則の36条となります。この条文内にパチンコの賞品(景品ではなく賞品です。そもそもパチンコで遊ぶことを遊戯ではなく遊技と呼びます。言葉遊びのようですが、パチンコは技の競い合いをする競技であり、得られるのは偶然の抽選結果による景品ではなく、技を使用し勝ち得た賞品なのです。偶然の抽選をするのは賭博行為ですからね)の上限金額が記載されています。以下、その部分だけ抜き出しますね。

3 法第十九条の国家公安委員会規則で定める賞品の価格の最高限度に関する基準は、九千六百円に当該金額消費税等相当額を加えた金額を超えないこととする。

 さて、ここの9,600円はどこから出てきた金額か分かりますか?これは、現在のパチンコの大当たり1回の最大出玉が2400発で、1玉の最大遊技料金が4円ですので2400発×4円=9,600円なのです。
 また、賞品の質についても当該施行規則内に規定があり、以下のように記載されています。

客の多様な要望を満たすことができるよう、客が一般に日常生活の用に供すると考えられる物品のうちから、できる限り多くの種類のものを取りそろえておくこと

 ここから逸脱するような商品を置くことはできない為、あまり突飛な品物を用意することはできません。ちなみに「できる限り多くの種類のもの」とは、遊技台が500台以下の場合は500種類以上、500台を超えるとその台数に等しいだけの種類を用意しなければなりません。色々と規定がありますね。

Q3 夜中にパチンコがやりたい。三重県では年末年始に徹夜でパチンコができるじゃん。なんで普段からできないの?

 まず、風営法第13条に以下のような記述があります。

風俗営業者は、深夜(午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。

 まず、これが大前提にあり、これ以外の時間の規制は各県の施行条例に係ることとなります。私の住んでいる愛知県の施行条例は次のように記載されています。

第六条
風俗営業者は、県の全域において、午前六時後午前九時までの時間にあつては、その営業を営んではならない。
2 法第四条第四項(ぱちんこ屋等射幸心をあおる風俗のこと)に規定する営業を営む風俗営業者は、県の全域において、前項に規定する時間のほか、午後十一時から翌日の午前零時前(前条第二項各号に掲げる日における当該各号に掲げる地域内は、同条第一項に規定する時まで)の時間にあつては、当該営業を営んではならない。

 法律および施行条例を見ると、まず午前0時から午前9時が、そして午後11時から午前0時までは営業してはならないと記載されています。
 法律は日本全国共通ですが、施行条例は県によって若干の違いがあるためので場所によっては少しずつ営業時間が異なるそうですが、少なくとも通常は午前0時から午前6時まではパチンコ屋を営業することができません。
 では、なぜ、三重県は一時期とはいえ深夜営業ができているのでしょうか。それは、風営法13条後半にこんな一文があるからです。

ただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合は、次の各号に掲げる日の区分に応じそれぞれ当該各号に定める地域内に限り、午前零時以後において当該条例で定める時までその営業を営むことができる。

 さて、三重県の施行条例を見てみましょう。該当する施行条例4条前半及び5条を記載します。

第四条
法第十三条第一項第一号の習俗的行事その他の特別な事情のある日として条例で定める日は次の各号に掲げる日とし、当該特別な事情のある日に係る法第十三条第一項第一号の条例で定める地域及び同項の条例で定める時はそれぞれ当該各号に定める地域及び時とする。
一 一月一日 県内全域において午前六時
二 一月二日から同月十日まで及び十二月二十一日から同月三十一日まで 県内全域において午前一時
三 祭礼その他特別の行事の行われる日として三重県公安委員会規則で定める日 同規則で定める地域において同規則で定める時及びその他の地域であつて次条に掲げる地域に該当する地域において午前一時

第五条
法第二条第一項第四号の営業(まあじやん屋を除く。)は、県内全域において、午前六時後午前九時までの間、これを営んではならない。ただし、第四条第一号に掲げる日にあつては、この限りでない。

 簡潔に言うと、三重県の条例で、「習俗的行事(伊勢神宮参拝とか)」みたいな特別な行事がある時は特別に営業できますよということが書いてあります。
 条例によると、12/21~12/31まで及び1/2~1/10は25時まで風俗店が営業でき、1/1はなんとパチンコ店に関しては終日営業ができることとなっています(第4条で午前6時まで営業ができるとあり、第5条でパチンコ屋のみ午前6時~午前9時にも営業しても良いとあります)。
 「伊勢神宮を参拝する観光客の為にトイレを提供する」ことが当該条例の目的という事みたいですが、この条例のいきさつは一般に公開されていない為正直わからないところがあります。風俗的行事等特別な事情を形成する基準等の定めはないそうで、今後新たな「習俗的行事」の特例がなされることは難しいのではないでしょうか。
 ということで、普段からぱちんこ屋のオールナイト営業ができない理由は理解していただけましたでしょうか。

 今回はここまでとします。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。