こんにちは。行政書士の石濵です。何度かギャンブル(法には抵触しないもの含む)についての記事を書きましたので、そのフォローの意味も込めてギャンブルの借金を本人が返せなかった時の対処法について記載したいと思います。

 まず初めに法律と全く関係ない話をさせて頂きます。
 かの有名な心理学者であるジークムント・フロイトは、人間には「デストルドー(死に向かう本能的なもの)」が内在すると述べていることを大学時代に講義で聞いた記憶があります。これが本当なのか、また誰にでもこのような本能があるのか、それともごくごく一部の人にのみ備わっているのかは正直誰にもわからないでしょう。「ギャンブルをして楽して儲けたいわけじゃない。破滅に向かうことが楽しい(というか止まらない)」という人が存在することを否定するわけではありません。ただ、みもふたもない話ですが

ある程度のお金が無ければ生きていけない

 これは事実であり、いくらギャンブルが好きだろうが破滅に向かうことが本能だろうが、この事実を捻じ曲げることはできません。
 なので私は、生きていく為に借金をしてギャンブルをすることは絶対に無いと断言できます。
 ですが、ケースとして、「家族がギャンブルで借金をつくった」という事は決して珍しいことではありませんし、むしろ借金の理由としてはかなりオーソドックスというかありふれた理由だと思います。
 前置きが長くなってしまいましたが、ここから本題です。

夫婦間の借金は家族で返さなければいけない?

 通常は夫婦のいずれかが第三者に借金をした場合は、連帯して返済しなければなりません。その根拠は民法第761条となります。以下、ご覧ください。

第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。
但し、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りではな

 ただ、よく読んでもらえばわかると思いますが、連帯しなければいけないのは日常の家事に関する法律行為に限られます。この日寿の家事に関する法律行為の範囲ですが、裁判所は「その具体的な範囲は、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等によつて異なり、また、その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によつても異なるというべきである(最判昭和44年12月18日)」と言っており、一概に列挙することはできません。
 ですが、一般的には日用品の買い物とか、子供の学校生活にかかる費用なんかであり、場合によっては”毎年恒例の家族旅行の費用”なんかが該当するケースなんかもあるかもしれませんが、ギャンブルで消費した金銭が本条の対象となることは趣旨からいってもあり得ないでしょう。

じゃあ、夫の借金は自分にも子供にも関係ないの?

 一概にそうとも言えません。以下のような場合には夫がギャンブルでつくった借金を妻が、又は子供が返済しなければなりません。

  • 妻又は子どもが(連帯)保証人となって金銭を借り入れている場合
  • 妻又は子どもが、夫の死後、夫の債務を相続している場合
  • 妻又は子どもが夫の借金を自ら返済することを認め、貸主と自らで新たな法律関係を結んだとき

 但し、いくら法律で守られているといっても、最終的には自らの身を守れるのは自分だけです。違法な手段を用いる闇金等の話は日常的にテレビ等でも語られることから、他人事ではないと見受けられます。

基本的には”合意は守られなければならない”

 夫の借金がいくら自分と関係ないとは言っても、生活共同体の借金を無視しておくことは避けた方が良いでしょう。仮に違法な貸主の違法な貸付けであったとしても、基本概念としては「合意は守られなければならない」です。これからも借金をつくったパートナーと共に生活をしていくのであれば、自らもパートナーの合意に関し一緒に考えるか、弁護士等の専門機関に相談しましょう。

 最後に、一番大切なことですが、人間にどんな本能があろうとも、絶対にギャンブルの為に借金はしないでください。大抵の場合、借金をしなかったことによる後悔よりも、借金をしてしまった後悔の方が大きいはずです。

 今回は以上になります。微妙に法律からそれてしまいましたが、「ギャンブルの借金ヨクナイ」というのは重要事項です。
 ではまたよろしくお願い致します。