こんにちは。行政書士の石濵です。もう新型コロナという単語が世間をにぎわせ始めてから半年近くなります。その間、活性と鎮静を繰り返し、今(2020年9月半ば)はピークを少し過ぎたように感じますが、まだまだ油断はできません。GoToキャンペーンも始まって1か月以上も経ち、持ち直しつつある業態もあるのでしょうが、大部分の企業様は大変なご苦労をなさっているかと思います。コロナ渦の中、頑張っている経営者の皆様には畏敬の念を感じます。

 さて、とある飲食店の経営者の方より以下のような問い合わせを受けました。

「コロナの影響で正直参っている。コロナを理由にテナント賃料の減額の交渉はできないのか」

 同じように考えている方は少なくはないでしょう。
 問題がデリケートであるために、断定はできませんが、当事務所の見解として、以下のアドバイスを致しました。

コロナを理由に家賃減額の交渉はできるの

1.相手が任意に交渉に応じる場合

 まず、交渉が可能かどうかの回答ですが、相手が任意で交渉に応じるのであれば、当然に可能です。
 その場合の交渉の代理人は弁護士に限られてしまうため、自身で直接交渉をするか、弁護士を代理人として交渉させることとなります。但し、相手に応じる義務はないことと、相手もまたコロナで苦労していることを念頭においてください。

2.借地借家法32条の1による請求をする場合

 条文を確認しましょう。

借地借家法32条
1.建物
の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。(以下略)

 借地借家法(土地建物の賃貸借に関する特別法)では、条文にあるよう”土地建物に対する租税その他の増減により土地建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済的事情の変動により、又は近傍同種の建物の賃借に比較して不相応になったとき”に限定して賃料増減の請求ができます。
 今回のケースではこの内容に当てはまっているようにも見えますが、一時的な需要の減少はあるにしても土地建物の価格の低下があると断言できない状況であると考えます。もちろん、今後明確に土地の値段が下落すればこちらの条文による請求ができますが、現段階では非常に難しいでしょう。

テナント賃料を支払えない場合はすぐに追い出されるのか

 現在までの物件賃借の判例では、賃料不払いによる契約解除を賃貸人から行うには、賃借人と賃貸人の信頼関係を破壊している程度に状況が切迫していないと一方的な解除は出来ないとなっています。言い方は悪いですが、1~2か月程度の賃料滞納は信頼関係を破壊しているとは言い切れず、賃借人は出ていかなくても済みます。
 また、法務省は「新型コロナウイルスの影響により3か月程度の賃料不払いが生じても、不払いの前後の状況等を踏まえ、信頼関係は破壊されておらず、契約解除が認められないケースも多いと考えられる」という見解を示しています。

今後どうすればよいのか

 今後の事は、正直誰にも見当が付きません。いずれは需要が回復する可能性が高いとは言われていますが、何年後なのかは専門家の中でも意見が分かれるところです。
 現段階では、各種補助金や無利息融資を利用して当面を凌ぎ、その間に経営者自身がどのようにするのかを考えるしかありません。もちろん状況が悪い状態が長引けば新たな補助金等があるのかもしれませんが、断言することは困難です。

 以下、経済産業省のHPで、コロナ対策としての補助金、助成金等がまとめてありますので参考にしてください。また、具体的な適用関係に関しては、各種窓口に問い合わせるか、私共専門家の利用をご検討ください。

経済産業省 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

今回は以上とします。次回もよろしくお願い致します。