こんにちは。行政書士の石濵です。今回は前回に引き続き、相続に関する民法の解説となります。遺言の効力に関する条文の途中でしたので、その続きですね。それではお願い致します。

第995条(遺贈の無効又は執行の場合の財産の帰属)
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 遺言にて遺贈を受け取るように記載されていても、受け取る側は当然受け取りを放棄することができます。(放棄できること、放棄した場合は、遺言者の死亡時にさかのぼって効力を生ずることは第986条に記載があります。)
 また、但し書きにあるように遺言に別段の意思表示があった場合(遺贈に停止条件が付いている場合等)があればその意思に従うことが記載されています。

第996条(相続財産に属しない権利の遺贈)
遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りではない。

 例えば、遺言者が遺言に「○○にA土地を遺贈する」とあっても、遺言者が死亡時にA土地を所有していなかった場合、その遺言は効果を生じないこととなります。
 ですが、但し書きにあるように、「その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められる場合」は違う解釈となります。例えば遺言の意図が「自分が死んだ後、○○の生活拠点になるようにXマンションを買い○○に与えたい」場合は死亡時点ではマンションを所有していなかったとしても、遺言が有効となる可能性があります。

第997条(※相続財産に属しない権利の遺贈)
① 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書きの規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
② 前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、又はこれを取得することについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従う。

 前条の但し書き部分の遺贈、つまり前条に挙げた例で言うと、「自分が死んだ後、○○の生活拠点になるようにXマンションを買い○○に与えたい」という遺言があった場合の話です。
 ①では、このような遺贈の実質的処理は遺贈義務者が行うことを記載しています。
 また、②では、この実質的な処理を遺贈義務者が行うことが不可能な場合、又は行うことはできるが費用が過分に費用が掛かる場合は、遺贈対象物相当の価額(この場合はXマンション)の弁償を贈与を受ける者にしなければいけないということが記載されています。今回の例で言うとXマンションは遺言実行時は第三者の所有物であり、その第三者が遺言の通りにXマンションを売却しなければいけないわけではないので、実現不可能な場合についても記載されている事になります。

第998条(遺贈義務者の引き渡し義務)
遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は転移する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従う。

 最近になって改正された条文です。遺贈の目的物は相続の開始時の状態で引き渡せば良いというような内容が記載されています。
 当たり前のないようじゃん。と思われる方もいますが、改正前は不特定物(一点物ではない、代わりの利くもの)の遺贈の際には遺贈義務者が不特定物を完全な状態で引き渡す義務がありました。例えば、「自分の所有している好きな時計1個を遺贈する」とう遺言があった場合、相続時に時計が壊れていたとしても、遺贈義務者の責任で瑕疵の無い状態にしたうえで引き渡さなければいけませんでした。
 ですが現在の条文では、相続時の状態(又は受遺者が時計を選んだ時の状態)で引き渡せばよいこととなっています。
 また但し書きで例えば「歌詞のない状態に修繕して引き渡せ」のような文言があればそちらが優先されるというようなことが記載されています。

第999条(遺贈の物上代位)
① 遺言者が、遺贈の目的物の滅失もしくは変造又はその占有の喪失によって第三者に対して償金を請求する権利を有するとしたときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。
② 遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言者が第243条から第245条までの規定により合成物又は混和物の単独所有権又は共有者となったときは、その全部の所有権又は持ち分を目的としたものと推定する。

 ①では、例えば遺贈する物が建物であるが、遺言実行時には火事で焼けてしまっていた場合で、火災保険の受け取りがまだであれば、その火災保険を遺贈の対象物とするような意味合いです。
 また②では遺贈対象物が他の物と混ざり合ったりしてもはや分離することができない場合、又は分離する為に過分な費用が掛かる場合の事となります。(民法第243条では、混ざってしまった場合、混ざったものの中でメインの物を所有していたものが混ざり合った物すべての所有権を得ること、また第244条では、混ざったものがすべて同じようなものでメインの物とメインじゃない物と区別ができない場合は共有物となることが記載されています)
 つまり、混ざってしまって分離できない場合に遺贈の対象物が混ざった物のメインの物であった場合、混ざった物すべてを遺贈対象物とすることとなっています。(説明がわかりにくくてすみません。)

今回は以上となります。またよろしくお願い致します。