こんにちは。行政書士の石濵です。今回は前回書いた、自らの事業承継の思い出に、今の自分からアドバイスをしようと思います。今回も前回に引き続き、お役立ち情報とは言えないかもですが、同じような立場の2代目、3代目の悩める経営者にとっては得るものがあるかもしれません。
 まあ日記のようなものなので、あまり興味のない方は読み飛ばしてくださいね。

壁1 変化が怖い
に対するアドバイス

 そもそもですが、私は経営コンサルとではありません。元従業員80人程度の食品工場経営者、現零細不動産管理会社経営者兼行政書士です。そんな私風情がコンサル様と同じような経営状況を劇的に変化させる特効薬のようなものを持ち合わせていない事を理解してください。

そもそも、事業承継の対象を間違えていませんか

 多分本人も薄々感じていると思いますが、変化を嫌う人は間違いなく経営者に向きません。ほぼ、すべての物事は絶えず変化をしています。電子機器や移動手段に限らず、伝統芸能である歌舞伎だって新しいことに挑戦しています。比較的変化が緩いといわれている食品業界だって衛生管理の手法や保存技術は日々進化していますし、味に関しても10年前に無かったような味のおにぎりやサンドイッチがコンビニなんかにもあふれかえっています。 
 少し話を変えますが、行政書士は「相続の専門家」として、相続に関する悩みを聞く機会が非常に多いです。
 ご存じかとおもいますが、相続は「法定相続人」が決まっているため、特別な遺言が無ければ法定相続人がそれぞれ決められた割合を目安に財産を相続することが基本となります。

ですが、事業の継承には、そのような定めがありません。

 事業の承継の目的は、あくまでも「事業の継続」です。血族に財産を残したい場合は私人の財産を相続させればよいだけの話です。
 まず、事業の継続を第一に考えるのであれば、その事業のことを熟知し、その後の事業展開に関する考えがあり、事業を推し進める意欲がある人が適任です。そのすべてを兼ねそろえる人材は中々いないとは思いますが、少なくともその事業についての知識もなく、新社会人に毛が生えた程度の、意欲もない私よりも適任者がいたはずです。
 また、中小企業の場合、大企業と違って「法人格」を信頼した取引よりも「実際に業務をおこなう人の人格」を信頼して取引を行うケースが比較にならない位多いと感じました。また、社内においても、「法人格」ではなく「信頼できる経営者・上司」に対して人はついてきます。

 事業を継承させる側は、ぜひ「この人に継承して大丈夫か」という疑いをもってください。その結果、「この人に継承させたい」という人が血族でなくてもいいじゃないですか。人間だれしも向き不向きがあり、不向きな人が承継すると、承継者、取引先、従業員すべてが不幸になる可能性を孕んでいます。
 事業承継に適した人材がいない場合は真剣に会社の譲渡やM&Aによる売却等を考えるべきです。場合によっては廃業を考えても良いと思います。私は、そこまでが経営者の責任であると考えます。

 事業を承継する側は、「血族だからと言って無理に承継する必要はない」という考えを持ってください。一度引き受けたら後には引けません。自分の力で会社をなんとか継続させるか、自分で新たな人を見つけ会社を承継させるか、自分で会社の譲渡、売却を考えなければいけなくなります。後者はとても辛いことで、人から恨みを買ったり、神経をすり減らす結果となる可能性があります。

壁2 変化を嫌うあまり無理に大きな組織づくり
に対するアドバイス

 変化に関しては、上の方で若干書かせていただきました。変化は必要です。ここでは、それとは別に、客観的な目の必要性について述べます。

 経営者にとって従業員は仲間です。とても大切ですし、一緒に喜び、悩み、苦労し、議論を重ね、一つの目標を達成したときの感覚は会社を経営していないと味わえない、とても貴重で価値のあるものだと思います。それでもなお、経営者と従業員(資本関係のない役員含む)では立ち位置が全く違います。
 事業の進め方を従業員と話し合い、方向性を見出すことは重要ですし、誰しもが行うことだと思います。ですが、「会社が繁栄するために全力を注いでいる」人たちばかりではありません。中には「会社の利益より自分の利益」「派閥の利益が大事」という人もたくさんいるはずです。
 そんな時、「識見があり、会社のことを考えてくれて、かつ外から忌憚のない意見を述べてくれる人」の存在がとても重要になってきます。

 私の場合は顧問税理士でした。税理士の先生に、同業他社の経営戦略を(もちろん守秘義務を守った範囲で)伺い、自社と重ね合わせ、費用面での試算を行い、また背中を押してもらったことが何度もあります。
 私は最終的に方向性を誤ってしまいましたが、少なくとも従業員に恣意的な意見を尊重し、痛い目に何度もあってきた経験がありました。

壁3 事業に対する知識の不足
に対するアドバイス

 正直、今まで経験したことがない業界の知識を事前に得ることは非常に困難です。また、許可申請に関しても、知識がないために結果モグリのような形で営業をしている同業者の方もいくらか見たことがあります。
 また、今まで許可申請に携わった来た人が会社を離れる際に、今までの知識の蓄積がなくなり、結果今まで適切に許可申請をしてきたにも関わらず、途中からモグリ同然の営業をしてしまうこともあり得るでしょう。私も、運送業許可申請の知識がなく、立ち入り検査が入った際に醜態をさらし車両の封印をされてしまい、業務が回らず困ったことがあります。

 手前みそですが、何年かに1度しかないような許可申請は、行政書士にすべて任せてしまうのが一番楽で、かつ許可申請者が変わっても困らない為、とても都合がよいのではないかと感じます。
 当時は行政書士の存在を知らなかったのですが、知っていたらこんな面倒なことは行政書士に丸投げしていました。

壁4 設備の更新と借金したくない病
に対するアドバイス

 設備は工場の命です。設備保全をきちんと行わなければ適切な生産活動が行えなくなる半面、設備がきちんとしていても商品に需要が無ければただ会社の延命処置をしているにすぎません。延命処置は適切な治療が無ければ、快方に向かわず、お金と時間を浪費するだけの結果となってしまう恐れがあります。
 まず、「設備の更新をしない」と決めた場合は早急に廃業又は会社の譲渡、売却に全力を上げましょう。言いにくいことですが、顧問税理士や弁護士当、同業他社を多く知っている所か商工会等に相談するのがよいかもしれません。
 「今後も会社を続けていくために設備の更新、補修をおこなう」と結論が出た場合は、セットで「会社を変えていく覚悟」も必要となってきます。その覚悟がなければ、設備の更新は諦めて、廃業なり譲渡売却へ舵を切るべきです。間違っても、「設備の更新をせずに、ぎりぎりまで頑張る」という結論を出さないでください。ほとんどの場合、良い結果を生みません。

 会社を続けていく決心がついた場合は、借り入れを検討する前に補助金について勉強しましょう。商工会や市、県、国、数えきれないほどある支援機関で様々な補助を行っています。
 漫然と待っていても補助金に関する知識は得られないですが、少しネットで調べただけでも様々なものが見つかります。
 それが難しい場合は、顧問税理士や銀行の担当者に一度訪ねてみてはいかがでしょう。お互いの利益になることなので、親身になって探してくれるかもしれません。
 または、行政書士に相談するのも良いでしょう。多くの行政書士は、無料相談を行っています。自分の会社に適した補助金があるかどうか位は無料で調べてくれます。
 行政書士の私が言うのもアレですが、補助金の申請は難しくありません。電話で問い合わせて、事務局の言うとおりに対応すれば、自社が適合している場合はほとんどど確実に補助金を受けることができます。
 自分に時間が無くても行政書士に丸投げしてしまえば、少なくとも補助金を受けない場合より確実に金銭的に楽になります。是非活用してください。

 今回はここまでとします。前回に引き続き今回も日記を書いているだけの感覚で、あまり有用なことを発信できていない気がしますが、読んでくださった方はありがとうございました。
 次回以降に具体的な補助金について紹介できたらと思います。そちらは間違いなく有用な情報ですのでご確認ください。