こんにちは。行政書士の石濵です。今回は民法(相続)の第2章である相続人についての条文を解説いたします。ここは、主に相続人の範囲と順位について示されている部分となります。自分がもらえる立場なのかそうでないのか気になるケースは多いと思います。

第886条(相続に関する胎児の権利能力)
①胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
②前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは適用しない。

 有名な条文です。①は判例では、胎児がおなかに居ればすでにすべての権利能力を有しているというわけではなく、無事に生まれた後に過去に遡り、相続の権利を得るという解釈になっています。死産が確定した段階で権利が消失するわけではないことを理解してください。

第887条(子及びその代襲者の相続権)
①被相続人の子は相続人となる。
②被相続人の子が、相続の開始前に死亡した時、又は第891条の

規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失った
ときは、その者の子がこれを代襲し相続人となる。但し、被
相続人の直系卑属でない者はこの限りでない。
③前項の規定は、代襲者が、相続の開始前に死亡し、又は第891

条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権
を失った場合について準用する。

 ①はそのまま、被相続人の子供が相続人であることを明示しています。基本的には子供がいれば必ず相続人になりますが、②によって相続前に死んでしまった子供がいる場合や第891条に書かれている例外(被相続人や相続人殺害した場合など)や廃除(被相続人を虐待したりして相続させないように被相続人に裁判所に請求されるなど)となった人がいる場合はどうするかが書かれています。ここに出てくる”代襲”とは、該当する者が相続人の立場に成り代わることです。
 ③では、代襲者が死亡したり廃除されている場合、代襲者の子供が更に代襲者となる旨が記載されています。

第888条 削除

 この条文は代襲相続について書かれていた条文でしたが、1962年の改正で第887条②③に取り込まれる形で削除されました。

第889条(直系直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
①次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
②第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。

 これは、被相続人に子供もしくは子供の代襲者がいない場合にどうするのかを定めた条文です。子供及びその代襲者がいない場合、直系尊属(お父さんお母さん、あるいはお祖父ちゃんお祖母ちゃん)のうち親等が近い人となります。仮に子供及びその代襲者がいなく、お父さんお母さんお祖父ちゃんお祖母ちゃんがいた場合はお父さんお母さんの二人が相続人となります。また、そのいずれもいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
 ②では、兄弟姉妹が相続人であった場合は、もし兄弟姉妹が死亡していた場合、第887条にある代襲者の規定を当てはめることが明示されています。

第890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

 ここでは、被相続人に配偶者がいた場合のことが明示されています。欠格、廃除されている場合等を除き、常に相続人となります。例えば被相続人に子供がいれば、被相続人の配偶者と子供が相続人となり、被相続人に子供がおらず、直系尊属がいる場合は配偶者と直系尊属が相続人となります。また、被相続人に子ども、直系尊属、兄弟姉妹がおらず配偶者のみがいる場合は配偶者のみが相続人となります。

第891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 ここでは相続人の欠格事由(相続人の資格を失う事由)を定めています。5通りの欠格事由が挙げられていますが、読んでみれば至極当然の内容ばかりです。相続前の欠格であれば、その相続に加わることができず、また相続開始後に発覚した場合は相続前に遡って相続資格を失います。また、相続終了後になって発覚した場合、他の相続人が相続回復請求(第884条に書かれています。時効がありますのでご注意ください)によって回復を請求することができます。
 但し、欠格者に直系卑属(子供等)がいれば、相続人が死亡している時と同様に代襲相続をすることができます。

第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 ここでは相続人の廃除に関して書かれています。この場合以外での廃除がのちの第893条に記載されていますので合わせてご確認ください。前項の欠格と廃除の違いですが、欠格は第891条に当てはまる場合は申し立て等がなくても当然に相続人の地位を失いますが、廃除は被相続人が家裁に請求するか遺言で意思表示ををしたときのみ相続人の地位を失います。
 ここに記載のある「著しい非行」ですが、例えば何度も被相続人に借金を重ね、全く返済をしない等が該当するそうです。但し、ケースによって異なりますので具体的な事例が当てはまるかどうかは弁護士さんや司法書士さん、行政書士さんに直接確認するのが良いでしょう。

第893条(遺言による推定相続人の廃除)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 第892条の解説でも述べましたが、この条文は、遺言で廃除の意思を示した時の事が明示されています。

第894条(推定相続人の廃除の取り消し)
①被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
②前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

 ①では被相続人が家裁に請求した廃除の取り消しについて、②では遺言に書かれた廃除の意思表示も①と同様に取り消せることが明示されています。相続人に誠心誠意誤り許しを得たという事でしょう。
 但し、前に述べた欠格事由に該当する場合はいくら許しを願い出ても取り消されることはありません。なぜかは条文を読めばはっきりわかります?よね。

第895条(相続人の廃除に関する裁判確定前の遺産の管理)
①推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
②第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。

 ①では、相続人廃除を家裁に請求してから裁判が確定する前に相続が開始された場合は、家庭裁判所が親族や利害関係者、検察官の請求によって相続財産の管理について必要な処分ができるとあります。基本的には家庭裁判所が相続財産管理人を定める事となるでしょう。
 ②では相続財産管理人の職務や報酬、権限は不在者の財産の管理に関する条文(第27条~第29条)を当てはめることが記載されています。管理人は第27条~第28条に記載されているように財産目録を作成しその財産に関し、家庭裁判所の許可が必要となる事が記されています。

今回はここまでとします。次回も宜しくお願い致します。