こんにちは。行政書士の石濵です。今回は勘違いしている方が多くいる(と思われる)クーリングオフについて解説したいと思います。

 先日、友人から「通販で指輪を購入したんだけど、サイズが違うからクーリングオフがしたいんだけど、相手にクーリングオフしますって電話すればいいの?」という問いかけがありました。色々と説明したかったのですが、日常会話で「クーリングオフとは・・根拠は・・」みたいな話をするのも憚られるので、「通販の雑誌やHP、テレビ情報なんかの中に解約規定が書いてあると思うよ。書いてないなら受け取ってから8日以内に解約したい旨を伝えたら大丈夫だよ。」と伝えました。もしかしたら彼は、”通販は商品到着から8日間はクーリングオフができる”という認識を持ってしまったかもしれません。だったら少し申し訳ないような気もします。一般的には通信販売はクーリングオフの対象外ですし、販売会社のキャンセル規程によりキャンセルできる場合も少なくないですが、クーリングオフでの契約撤回と違いコストがかかることもあります。
 では、クーリングオフってなに?

 そもそもの話ですが、”世の中にクーリングオフ法というものがあり、そのルールに従えば自由にキャンセルできるんだよ”というものではありません。では、詳しく見ていきましょう。

クーリングオフの定義

 前述したとおり、クーリングオフ法みたいな法律があるわけではありません。様々な取引に関する法律に同じような解除規定が書かれいるので、それを一括りにしたものを一般的に”クーリングオフ制度”と呼んでいます。法律が違うため、若干の違いがありますが、要約すると、クーリングオフ制度とは次のような形になります。

  1. 相手の事務所ほか営業所で契約したものでない等の条件を満たす
     根拠となる法律(特定商取引に関する法律、割賦販売法、特定商取引、宅地建物取引業法など)ごとに記載がありますが、ほとんどの場合は自ら取引の為に相手の営業所に赴き契約した場合は除外となってしまいます。
  2. 法定書面の交付から8日~20日が経過していない
     法令でクーリングオフが可能とされる取引をする際に、まず販売者はクーリングオフが可能であることを告知する書面を含めた法定書面を交付する必要があります。それがなされなければ、購入者はいつでもクーリングオフが可能となります。交付を受けてからの撤回期限ですが各法律によって期間が決まっています。最短で8日です。
     なお、契約撤回の意思表示をした日(書面を郵送した日)が書面交付日から8日以内であれば事足ります。
  3. 書面で相手に撤回を告げる必要がある
     各法律の中に「書面で」という一文があります。
  4. 違約金、解約金等必要ない
     法文内に費用は販売者の負担であることが示されています。
  5. 無条件で契約の撤回ができる
     理由は必要ありません。「やっぱり契約したくなくなった」という事実だけで充分です。

 この1~5をすべて兼ねそろえているものをクーリングオフと呼びます。所定の取引では法律上、当然にクーリングオフを利用し契約を撤回することができます。
 ただ、世の中には様々な取引に関する法律や各業界のガイドライン、それぞれの企業の規定等があり、契約解除に係る費用が購入者負担であったり、解約する為の理由に制限があったりする場合があります。解約規定がある=クーリングオフが適用されると勘違いしないことが大切です。

クーリングオフが適用される取引

 以下、クーリングオフ(上記の定義参照)が可能とされている主要な取引です。
なお、クーリングオフはあくまでも「一般消費者の救済」を目的とするもので、業者間取引には適用されない場合がありますのでご注意ください。

  • 訪問販売
     法定書面を受領してから8日間がクーリングオフ期限となります。
     ここで注意したいのが、いくら訪問販売だといっても自ら訪問を請求し商品を購入した場合はクーリングオフは適用されないということです。ご注意ください。
  • 電話勧誘販売
     法定書面を受領してから8日間がクーリングオフの期限となります。
    基本的にはかかってきた電話で契約を結ぶ場合ですが、一旦電話を切ったのちに郵送等の手続きで契約を締結したとしても、この電話勧誘販売の適用範囲となります。
     なお、一旦勧誘の電話を切ったのちに自らの意思で電話をかけなおした場合は電話勧誘販売に該当しませんが、販売者が欺瞞的なセールストークでいったん電話を切ったのちに掛けなおすよう要求しそれに答えたとしても当該電話勧誘販売に該当します。
  • 連鎖販売取引(マルチ商法)
     いわゆるねずみ講などです。こちらは法定書面を受領してから20日が期限となります。
     但し、契約後マルチ商法を行う商品がなかなか販売者から届かずに20日が過ぎてしまうケースが予想できるため、法定書面受領か商品の到着かどちらか遅い方から20日を期限としても良いことになっています。
  • 特定継続的役務の提供
     エステや塾等の継続した役務の提供を指します。商材によって金額の規定があり、低額な場合はクーリングオフに該当しない場合がありますのでご注意ください。
    法定書面受領から8日が期限となります。
  • 業務提供誘因販売取引
     有償で仕事を行う権利を与える取引がこれにあたります。クーリングオフは法定書類を受領してから20日となっています。
  • 個別信用購入あっせん(を用いた訪問販売、特定連鎖販売、業務提供誘因販売)
     信用購入あっせん取引とは商品を購入する際に、同時にクレジット会社とも契約し、クレジット会社が販売会社に代金を支払い、消費者は代金相当をクレジット会社に支払うような取引の事です。
     この場合は原則としてクレジット会社に対し通知を行うことによりクーリングオフが可能であり、販売会社への通知は必要ありません。
     クーリングオフ期限は訪問販売の場合は8日間、特定連鎖販売及び業務提供誘因販売の場合は20日間となります。
  • 現物まがい商法取引
     「金やプラチナ、真珠等を資産として保有しませんか」という取引でそれらに投資したは良いが、権利書等の書面のみ引き渡されるだけで現物は渡されない(店舗にて保管する等の建前です)ような取引の事です。
     契約から14日がクーリングオフの期限となっています。
  • 宅地建物取引
     販売者が宅建業者であり、購入者が宅建業者以外の場合で宅地建物購入取引をした場合はクーリングオフの対象となります。
     但し、自ら販売者の事務所に赴き申し込みをした場合や自ら自宅に呼び出して申し込みをした場合は対象外となりますのでご注意ください。
     法定書類を受け取ってから8日間がクーリングオフの期限となります。
  • ゴルフ会員権取引
     50万円以上のゴルフ会員権はクーリングオフの対象となります。法定書面を受け取ってから8日間がクーリングオフ期限となります。
     言うまでもないことですが、適用されるのはゴルフ場が新規で会員を募った場合に限られます。個人間での取引や、会員権仲介業者からの場合はクーリングオフ適用除外となります。
  • 投資顧問契約
     投資顧問契約とは、投資の専門家が市場分析を行い、その分析した情報を有償で得る契約のことです。書面の受領から10日以内であればクーリングオフが可能となりますが、例え数日であっても利用した日数分の顧問料の支払いは必要となります。 
  • 保険契約
     1年以上の生命保険、損害保険、自動車保険などの保険はクーリングオフが可能な場合があります。というのは、クーリングオフの対象となる場合がかなり限定されていて、例えば、業務の為の保険でない事や、保険会社の事務所に自ら伺って申し込みをした場合でない事、自ら場所を指定して保険の申し込みをした場合でない事、ネット等での申し込みでない事等の条件があります。
     クーリングオフの期限は書面を受け取ってから8日がクーリングオフの期限となりますが、契約から解除までの日数分の保険料は返還されません。

クーリングオフの通知書面の作成方法

 前述のとおり、販売者に対しクーリングオフする旨を伝える場合は書面でなくてはいけません。難しく考えずに、以下の内容が記載されていれば十分だと思います。

 ・契約申し込み年月日
 ・販売者
 ・販売担当者
 ・商品名
 ・契約金額
 ・クーリングオフする旨(理由は必要ありません)

 消費者庁や各都道府県のHPなどには「書留、特定記録郵便をご利用ください」と書いてあるケースがありますが、私は金額が高額であれば内容証明&配達証明を利用し、確実にクーリングオフする意思が相手に伝わることを確認すべきだと考えます。

行政書士石濵事務所 内容証明

 内容証明等で内容を保管しておかなければ「書面にそのような内容は書かれていなかった」と言われかねませんし、配達証明をしておかないと「そんなもの届いていない」と言われかねません。
 法律上はいくらこちらが正しくても、食い違いがあり争訟になると、弁護士費用等も必要になる可能性もありますし、時間もかかってしまいます。

クーリングオフは万能なの?

 クーリングオフは”無条件で契約の撤回ができる”と記載しました。本当はその通りなのですが、世の中には法規を遵守しない悪徳業者も多くいることを忘れないでください。
 クーリングオフの通知をしても、業者が返金せずに何の連絡もない場合もあるでしょうし、行方をくらます場合もあります。あるいは自宅まで押しかけて撤回を強く要求される可能性もあります。相手が反社会的勢力であればそれ以上の事もあるかもしれません。

 クーリングオフに頼らずに、購入前にしっかりと考えて、「絶対にクーリングオフなんてしない」と思えて初めて商品を購入し、クーリングオフは最後の手段として初めのうちは考えない位でちょうどいいのかもしれません。

今回はここまでです。読んで下さりありがとうございます。