こんにちは。行政書士/社会保険労務士の石濵です。今回は僕が会社を経営しているときに従業員とよく揉めた休憩時間について解説したいと思います。

 私は以前経営していた会社は主に昼食の仕出し弁当をオフィスや工場へ配達する仕事でした。1食あたり350円~500円くらいの価格帯でしたが多くの場合会社からの補助があり実際に従業員の負担する食費は5割程度の会社が多かったと記憶しています。
 通常は食事補助も現物支給の給与となるので食事補助として会社が支払った部分にも税金や社会保険料がかかるのですが、補助額が50%以下であることや補助額が月額3,500以内であること等の条件を満たすことにより補助を受ける側の課税対象から外れ、また、会社側も食事補助費用を福利厚生費として経費で落とすことができるので食事補助は労働者、使用者共に税制上お得な制度と言われています。

 さて、休憩時間の解説でなぜ食事補助の話をしたのかというと、会社側が補助を出し仕出し弁当を用意することが従業員満足や税制上の優遇のほかに“昼休みも会社内で食事をさせることにより休憩中に電話番や雑務をさせる”ことを目的にしている場合もあるからです。はたしてそれは許されるのでしょうか。

休憩時間の定義

 一般的には“労働者が業務から完全に離れられる時間”と言われています。例えば、休憩時間中に電話番をさせたり、実質的に出席を強要するランチミーティングを開催したりした場合はそれらの時間は休憩時間とみなされません。また、業務と業務の間の待ち時間も休憩には含まれませんので注意が必要です。

休憩時間を与えなければいけない労働者は

 休憩時間は正社員、パート、アルバイト問わず労働時間が6時間を超える場合は後述する一部の場合を除き必ず与えなければいけません(労働基準法第34条1)。休憩時間の取得は労働者から見れば保証された権利であり、使用者から見れば与えなければいけない義務となっています。
 使用者が規定通り休憩時間を与えない場合、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という非常に重い罰則が科せられます。もちろん休憩時間中の電話番や出席を強制したランチミーティングなども同様です。
 また、与えなければいけない休憩時間は労働時間によって以下のようになります。

 なお、休憩時間は必ずしも連続して与えなければいけないわけではなく合計で必要な休憩時間を超えれば条件を満たします。正し、過剰に休憩時間を細分化した場合は、労働者を休息させるという休憩時間に関する規定の趣旨を外れる為休憩時間と認められないケースもありますので注意が必要となります。
 また、所定労働時間が7時間30分の場合は休憩時間は45分以上あれば条件を満たすこととなりますが、そこから1時間の残業をした場合、労働時間の合計が8時間30分となるので休憩時間は合計で1時間以上必要となります。

休憩時間の規定が適用されない場合

 労働基準法が適用されるケースでも以下の労働者は休憩の規定が適用されません。

  1. 運輸交通業又は郵便もしくは信書便の事業に使用される労働者のうち、列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機に乗務する運転手、操縦士、車掌などの乗務員で長距離にわたり継続して乗務するもの
  2. 上記に該当しない乗務員で停車時間等が休憩時間に相当するもの
  3. 郵便通信業の事業に使用される労働者で、屋内勤務者30人未満の日本郵便株式会社の営業所(窓口業務を行う者に限る)において郵便の業務に従事するもの
  4. 労働時間・休憩・休日の規定が適用されないもの(高度プロフェッショナル制度が適用される者を含む)

 なお、上記の4で“労働時間、休憩、休日の規定の適用されないもの”という記載があります。そもそも、労働基準法はごく一部を除き、基本的に労働者を使用する事業すべてに適用されますが、労働基準法別表1にある事業区分ごとに特別な取り決めがあったり一部の内容を適用しなかったりというものがあります。
 労働基準法第41条1項では労働時間、休憩、休日の規定につき、別表第1の6号(林業除く)及び7号に対しては適用しない旨が定められています。
 さらに、同上2項、3項でさらに事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者、機密の事務を取り扱う者、監視又は断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けたものにも労働時間、休憩、休日の規定を適用しないことが定められています。
以下、労働基準法別表第1及び労働基準法第41条の条文となります。

労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
①別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
➁事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
③監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

休憩を与える際の原則

 休憩を与える際に気を付けなければいけない事は休憩の時間に限ったことではありません。規定通りの休憩時間を与えたとしても、与え方の原則に反していれば罰則の対象になってしまう可能性があります。ここでは休憩を与える際の3つの原則について見ていきましょう。

途中付与の原則

 休憩時間を労働が始まる前や終わった後に付与することは認められていません。労働基準法第34条1項にも、休憩を労働時間の途中に与えなければならない旨の記載があります。

労働基準法第34条(休憩)

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

一斉付与の原則

 基本的には休憩時間は事業場において一斉に与えなければなりません。「1人の電話番を残し他の労働者は休憩をとる」ことは原則に反することとなります。
 但し、現実問題としてこの原則を順守することは困難ですよね。実はこの原則には例外があり、次のケースに該当する場合は休憩時間を一斉に付与する必要はありません。

  • 労使協定を締結した場合(18歳未満の労働者を含む)
  • 運輸交通業、商業、金融・広告業、永外・演劇業、郵便通信業、保健衛生業、接客娯楽業、観光署の事業(18歳未満の労働者を除く)
  • 坑内労働に従事する労働者

 労使協定を締結した場合は業種や規模を問わ宇に一斉に休憩を与えることを要しませんが、協定で一斉に休憩を与えない労働者の範囲及びその労働者に対する休憩の与え方を定めなければなりません。

 なお、こちらの原則については労働基準法第34条2項に記載があります。

労働基準法第34条(休憩)

~中略~
②前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

自由利用の原則

 当たり前に聞こえるかもしれませんが、使用者は労働者に休憩時間を自由に利用させなければなりません。自由時間は完全に労働から解放させなければならないからです。
 ただし、なにがなんでも自由というわけではなく、使用者は事業用の規律保持上必要な制限を加えることは休憩の目的(労働からの解放)を妨げない限り差し支えないものとされています。
 例えば「休憩中は外出を認めない」という制限は特別な事情が無ければ認められないケースも有りますが「休憩中の外出は上長に報告しなければならない」という制限は従業員の管理という視点から認められるケースが多いです。また、「休憩中にスマホを見てはいけない」という制限は、これまた特別な事情が無ければ認められないケースがありますが「休憩中に会社のスマホを見てはいけない」という制限は会社の備品管理の観点から認められるケースが多いです。

 また、以下は自由利用の原則を適用しなくても良いケースです。

  • 警察、消防官吏、常勤の消防団員、享救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者
  • 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者
  • 居宅訪問事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く)
  • 坑内労働に従事する者

いかがでしたでしょうか。今回はここまでにします。今後ともよろしくお願い致します。