こんにちは。行政書士/社会保険労務士の石濵です。今回は国民年金及び厚生年金の障害に対する補償を受けることができる障害について説明します。

 公的保険、年金制度で障害を理由とする何らかの給付を受けることのできるものは①労災保険➁雇用保険③国民年金保険④厚生年金保険⑤訓練等給付等が存在します。
 それぞれの制度の中に様々な内容の制度があり、給付の内容もまちまちですが、今回は障害を負った際に、その後の生活の糧としての意味合いの強い年金制度、とりわけ障害基礎年金と障害厚生年金に関して解説します。

障害基礎年金、障害厚生年金って

 障害基礎年金とは国民年金被保険者等がある一定以上の障害を負った際に支給される年金で、障害厚生年金は厚生年金被保険者等がある一定以上の障害を負った際に支給される年金です。厚生年金被保険者(及び厚生年金受給者)は同時に国民年金も受給する権利を有する為、障害の程度がどちらの年金の要件にも合致した場合は障害基礎年金、障害厚生年金の両方を受給することができます。

国民年金の障害基礎年金をうけとるには

 国民年金は原則として60歳まで、厚生年金は70歳までが被保険者となり、その後は被保険者の資格を失います。資格を失ったのちは保証を受けることはできないのでしょうか。
 初めに国民年金の障害基礎年金を受け取る場合の要件などをまとめます。

障害基礎年金を受け取れる者

 障害基礎年金を受け取れるかどうかの判断はいくつかのステップに沿って判断されることとなります。

①初診日における障害を負った者の立場

 障害基礎年金を受給しようとする者が、初診日において以下のいずれかの立場であることが求められます。

  1. 国民年金の被保険者であること
  2. 国民年金の被保険者であって者であって日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満であること
初診日とは

 初診日とは障害の原因となる疾病又は負傷をした際に、これを原因として初めて石もしくは歯科医の診察を受けた日となります。

➁障害認定日にどの程度の障害があるか

 原則として疾病、負傷等による障害を負った後に初めて石又は歯科医の診察を受けた日(初診日)から、1年6か月経過経過したとき又はその疾病、負傷等による障害の状態が固定されたときに一定の障害等級に該当する障害状態であることが必要となります。

 具体的に必要な障害等級については後述します。

③一定以上の保険料未納、滞納がない事

 初診日の前日において、初診日月の前々月までに被保険者期間がある場合には、その被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間であることが必要です。すなわち年金保険料の未納、滞納の期間が3分の1以上ある場合は障害基礎年金を受けることができません。ちなみに国民年金に加入後すぐに障害を負ったために一度も国民年金保険料を納付したことがない場合でも障害基礎年金を受ける資格があります。
 また、65歳未満の被保険者等への特例として、令和8年4月1日前にある傷病については初診日の前日において、初診日月の前々月までの1年間に国民年金保険料の未納、滞納がない場合はそれ以前に未納、滞納が長期間にわたりあったとしても障害基礎年金受給の対象となります。
 この③の要件を満たすことを俗に「保険料納付要件を満たす」と言います。

 上記①➁③をすべて満たすことによって、障害基礎年金を受け取ることができます。

例外:事後重症による障害基礎年金

 事後重症とは疾病、負傷等で障害を負ってしまった者で上記①③を満たしているが、➁の障害認定日において障害基礎年金を受給できるような障害の程度ではなかった場合に、その後障害の状態が悪化し障害基礎年金を受給できる障害となってしまった場合のことです。
 事後重症として障害基礎年金を受け取るためには次の要件を満たす必要があります。

  • 初診日において被保険者又は被保険者であったもので日本に住所を有する60歳以上65歳未満であること
  • 保険料納付要件を満たすこと
  • 障害認定日に障害基礎年金を受給できる障害の状態になかった者がその後65歳に達する日の前日までに障害基礎年金を受給できる程度の障害となっていること
  • 65歳に達する日の前日までに障害基礎年金を請求すること

例外:基準障害による障害基礎年金

 基準障害による障害基礎年金とは、通常では障害基礎年金の受給要件に達しない程度の障害を負った者が、新たに別の負傷や疾病等で障害を負い、前後の複数の障害を合わせて障害基礎年金を受給できる障害として扱う制度となっています。
 基準障害による障害基礎年金を受給するためには次の要件を満たす必要があります。

  • 障害基礎年金を受給できる障害等級に該当しない程度の障害を負った者が当該障害に係る障害認定日以降65歳に達する日の前日までの間にさらに後発障害を負い、前後の障害を併合して障害基礎年金を受給できる障害等級に該当する障害に至ること
  • 後発する障害の原因となった負傷、疾病等の初診日において被保険者又は被保険者であったもので日本に住所を有する60歳以上65歳未満であること
  • 後発する障害の原因となった負傷、疾病等の初診日に係る保険料納付要件を満たすこと

  なお、基準障害の場合は65歳に達する日の前日までに前後の障害を併合して障害基礎年金を受給できる程度の障害等級に該当する障害に至っている場合は65歳を過ぎても障害基礎年金の請求をすることができます。

例外:20歳前傷病による障害基礎年金

 国民年金は、すでに厚生年金保険被保険者である場合を除き、基本的には20歳から被保険者となります。ですが、国民年金の被保険者でない状態で20歳よりも前に傷病等で一定の障害を負ってしまった場合にも保障が用意されています。
 ただし、通常の障害基礎年金と年金受給の開始が異なり、

  • 障害認定日以降に20歳に達したときは20歳に達した日
  • 障害認定日が20歳に達した日以降の場合はその障害認定日

 のいずれかとなります。

厚生年金の障害厚生年金を受け取るには

 厚生年金の被保険者は主に厚生年金の適用事業所に被用されているサラリーマン等で雇用期間や月の就労時間等の一定の条件を満たす者となります。厚生年金の被保険者で60歳未満の者はほとんどの場合同時に国民年金の被保険者となり一定上の障害となった場合は障害基礎年金と障害厚生年金を両方受給することができます。
 障害基礎年金を受給するためには次のような要件を満たす必要があります。

障害厚生年金を受け取れる者

障害厚生年金を受け取るには次の要件を満たす必要があります。

①初診日における障害を負った者の立場

 障害厚生年金を受け取るためには初診日において厚生年金の被保険者でなければなりません。基本的には国民年金は60歳までが被保険者でその後65歳より老齢基礎年金の給付が始まるため「被保険者期間が終わってから年金を受給するための期間」があり、その期間に負った負傷、疾病にかかる障害も保障の対象でしたが、厚生年金は通常65歳から老齢厚生年金を受給できますが、適用事業所で一定以上の条件で就業する限り70歳まで(70歳になっても老齢を理由とする年金の受給資格がない場合は任意で加入し続けることも可)厚生年金に加入することができます。
 つまり、国民年金被保険者の60歳~65歳のような空白期間がないため、国民年金と違い初診日被保険者であることが求められます。

➁障害認定日にどの程度の障害があるのか

 障害認定日の考え方も障害基礎年金と同じです。ただし、障害基礎年金と障害厚生年金で受給要件となる障害等級が異なります。詳しくは後述します。

③一定以上の保険料の未納、滞納がない事

 障害厚生年金の受給要件ですが、「国民年金を未納、滞納しているか、滞納してるのであればどの程度の期間滞納しているのか」で判断されます。
 つまり、障害基礎年金と同じように「初診日の前日において、初診日月の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合には、その被保険者期間の3分の2以上が保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間であることが必要」となり、厚生年金の被保険者期間は例えば1か月であってもかまいません。

例外:事後重症による障害厚生年金

 障害基礎年金の事後重症と同じく、障害認定日に障害厚生年金が受給できる障害の程度でなかった者が、その後障害の程度が増進し障害厚生年金を受け取れるような障害等級となった者に対する保障です。受給するための要件が一部障害基礎年金と異なりますので注意が必要です。具体的には以下を満たす必要があります。

  • 初診日において、障害厚生年金の被保険者であること
  • 国民年金の保険料納付要件を満たすこと
  • 65歳に達する日の前日までに障害厚生年金を受給できる程度の障害等級に該当すること
  • 65歳に達する日の前日までに障害厚生年金を請求すること

例外:基準障害による障害厚生年金

 考え方は障害基礎年金と同じで、障害厚生年金の受給要件に達しない程度の障害を負った者が、新たに別の負傷や疾病等で障害を負い、前後の複数の障害を合わせて障害厚生年金を受給できる障害として扱う制度です。
 ただし、障害厚生年金は障害等級1級、2級、3級の場合に年金を受給できますが、複数の障害を併合して3級相当の障害となる場合は障害厚生年金を受給することはできません。基準障害による障害厚生年金を受給する場合は複数の障害を併合した場合、2級以上の等級に該当する程度の障害となることが障害厚生年金の要件となります。
 また、障害厚生年金を受給するためには障害等級に関する要件をクリアしたうえで、さらに以下の要件を満たす必要があります。

  • 障害厚生年金を受給できる障害等級に該当しない程度の障害を負った者が当該障害に係る障害認定日以降65歳に達する日の前日までの間にさらに後発障害を負い、前後の障害を併合して障害等級1級又は2級に該当する障害に至ること
  • 後発する障害の原因となった負傷、疾病等の初診日において被保険者であったこと
  • 後発する障害の原因となった負傷、疾病等の初診日に係る保険料納付要件を満たすこと

 なお、基準障害の場合は65歳に達する日の前日までに前後の障害を併合して又は1級又は2級の障害等級に該当する障害に至っている場合は65歳を過ぎても障害厚生年金の請求をすることができます。

障害基礎年金、障害厚生年金の受給に必要な障害等級

 障害基礎年金、障害厚生年金の受給開始には、障害認定日において一定の障害を負っているという事実が必要となります。

障害認定日の考え方

 すでに前述しましたが、障害認定日とは原則初診日から1年6か月が経過した日を言います。これは、負傷、疾病がある程度引き続いて症状が固定するのを待つ期間でこの期間を経て残存し治癒しなかった症状を障害としています。
 ただし、負傷、疾病の程度や初期症状によっては時間経過によって治癒しえない場合もあり、そのような場合には1年6か月を待つことなく障害認定日を迎えるものもあります。以下、一例を挙げます。

 このような障害認定日の例外は他にもいくつか存在し、このケースに該当する場合は初診日から1年6か月待つことなく障害基礎年金、障害厚生年金を受給の際の障害認定日要件を満たすことができます。

障害基礎年金、障害厚生年金の受給に必要な障害等級

 障害基礎年金、障害厚生年金の受給には一定の障害等級があり、それが支給要件と合致することが必要となります。

 この障害等級は生涯不変というわけではなく、障害に応じて数年に1度更新を行わなければなりません。その結果に応じて年金の減額や支給の停止があります。
 また、症状が悪化し、さらに上の等級に該当する場合もあります。この場合は自ら障害等級の改定請求をすることができます。原則として障害の受給権発生又は障害等級の最後の更新から1年経過後に行うこととされていますが例外として政令で定められた障害に限り受給権発生又は障害等級の更新から1年以上経過していなくても改定請求を行える場合があります。
 ただし、自ら改定請求をしても、障害の程度によっては障害等級がダウンしてしまうこともあり得ないことではありません。このあたりのことは事前にかかりつけ医に相談することを強くお勧めします。

今回はここまでです。ご覧頂きありがとうございました。