こんにちは。行政書士/社会保険労務士の石濵です。今回は就業規則について解説します。

 サラリーマンの皆様は自社の就業規則を見たことはありますでしょうか。労働基準法では就業規則の閲覧に関してもルールがあり、どのような会社でも必ず労働者が就業規則を閲覧できるようになています。

 就業規則は会社のルールであり、就業規則を閲覧したことが無い人はルールを知らない人とも言えます。ルールを知らなければ自らの権利を主張することもできず、また知らないところで義務を履行していなかったりルールを破っている可能性もあります。業務で忙しく時間が作れないサラリーマンの方が非常に多いのは承知していますが、自らの身を守るために、せめてさっと目を通すくらいのことはどんなに忙しくてもしなければ行けません。

 さて、それでは本題に入ります。

就業規則は絶対に必要なのか

 労働者を常時10名以上使用する使用者は、所定の事項を盛り込んだ就業規則を作成し所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。また、就業規則の内容を変更した際にも所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

 常時10名未満の労働者しか使用しない使用者は就業規則を作成する義務はありませんが、「就業規則に準ずるもの」を作成することができます。この「就業規則に準ずるもの」は労働基準監督署への届け出は必要ありませんが、社員に常に閲覧できる状態にしておくことにより就業規則と同様の効果が生じます。

 この「就業規則に準ずるもの」が無い場合、本来就業規則に盛り込むことで労働者に命ずることのできる時間外労働(別途36協定の締結が必要)や配置転換、懲戒等をすべて個々の労働契約に盛り込まなければならず、労働契約が非常に膨大になってしまいます。

 また就業規則は会社ごとに用意するのではなく事業場ごとに用意します。事業場ごとに業務の違いや賃金体系の違い等があり、会社単位で統一することが困難となるケースがあるからです。事業場ごとに違いが無く本社及び事業場すべてで同一の就業規則を要ししても構いませんが、届け出は各事業所ごとに行います。

ポイント👉

  • 労働者10人以上の事業場では就業規則必須
  • 労働者10人未満の事業場では就業規則不要(できれば就業規則に準ずるものを作成)
  • 就業規則は事業場単位で作成及び届け出(本社一括で作成も可能だが届け出は各事業場)

就業規則の効力の発生

 就業規則の効力の発生は作成日ではなく、労働基準監督署に届け出た日でもありません。これは過去の判例により明確になっており、就業規則の効力の発生は「社員に周知したとき」となっています。逆に言えば、就業規則を定め、また労働基準監督署に届け出ていても社員に周知しなければ就業規則の効力は発生しません。
 さて、周知の方法ですが、これも労働基準法によって明確に定められています。以下労働基準法からの抜粋です。

労働基準法第106条(法令等の周知義務)

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、(中略) 第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない

  条文からわかるように、就業規則は

  • 常時各作業場の見やすい所への掲示又は備え付け
  • 書面を交付する
  • その他厚生労働省令で定める方法

 のいずれかの方法によって周知しなければなりません。
 なお、その他厚生労働省令で定める方法とは、労働基準法施行規則第52条2に具体的に記載されており、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置するという方法になります。
 つまり、使用者が口頭のみで就業規則を説明したり、一定期間開示した後に隠してしまったりしてしまうと就業規則の効力が発生しないということになってしまいます。

ポイント👉

  • 就業規則の効力の発生は社員に周知したとき
  • 周知の方法は労働基準法及び施行規則で決まっている
  • 常時閲覧できるような周知でなければいけない

就業規則に記載しなければならない内容

 就業規則には「労働条件の明示」と同じように必ず記載しなければいけない内容(絶対的必要記載事項)、定めがあるのであれば記載しなければならない内容(相対的必要記載事項)、定めがあっても記載は任意である内容(任意的記載事項)が設定されています。詳しくは下記をご確認ください。

※①所定労働時間を超える労働の有無は労働条件の明示での絶対的明示事項であるが就業規則では絶対的必要記載事項ではない

 なお、就業規則によって定めてある内容であっても合理的でない労働条件を定めた内容、労働基準法に定められた労働条件に満たない内容は無効となります。

就業規則の意見聴取

 使用者は就業規則を作成又は変更した際に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければいけないという決まりがります(労働基準法第90条)。
 また、代表者の意見を書面に添付しなければなりません(労働基準法第90条1項)。この規定に反する場合は使用者に30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

組合が無い場合の代表は誰でも良いの?

 労働者の過半数が所属している労働組合があれば意見聴取の相手は明白ですが、そうでない場合は「労働者の過半数を代表する者」とだけ記載があり、選出に迷われるケースがあります。
 もちろんこの規定の趣旨は「経営者とずぶずぶな関係でない者に就業規則に対して意見をさせる」ことなので、できる限り民主的に選定する必要があります。具体的には以下のような取り決めがあります。

  • 過半数代表者は労働基準法41条2号に規定する監督・管理の地位にある者でないこと
  • 労働基準法に規定する過半数代表者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手段によって選出された者であって使用者の意向に基づき選出された者でないこと

過半数代表が就業規則に否定的意見を付した場合

 例えば過半数代表者が「この就業規則は厳しい」と意見を付した状態で労働基準監督署へ届け出ても、当該就業規則の効力に影響はありません。就業規則は使用者が一方的に定めることができるものだからです。但し、労働基準法の規定に満たない部分がある場合は労働基準法の規定を適用します。
 また、過半数代表が「この就業規則は厳しいから意見をしない」となっても使用者が意見を聴取したことが客観的に証明されるのであれば意見が添付されていない状態で届け出れば構いません。

今回はここまでです。ご覧頂きありがとうございます。