こんにちは、行政書士/社会保険労務士の石濵です。今回は合算対象期間について簡単に説明します。
まずは老齢基礎年金の受給要件のおさらいです。
① 保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を除く)を有すること
② 65歳に達している事
③ 保険料納付済期間、保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を含む)を合算した期間が10年以上ある事
上記③からわかるよに、老齢基礎年金を受給する為には保険料を納付した期間と免除を受けた期間が合計して10年以上なければいけません。これも平成29年7月までは③の期間が25年なければ老齢基礎年金を受給することが出来ませんでしたが、平成29年8月より大幅に改善された結果と言えます。ただ、現行の10年の期間も確保できない人が多数存在します。理由は様々ですが、例えば海外に住んでいた場合や国民年金が義務加入になる前にすでに高齢で物理的に10年という期間が確保できないケースがそれにあたります。そこで、合算対象期間という期間を設け、保険料納付済期間、保険料免除期間の合算が10年に満たない場合はそこに合算対象期間を合算し合計で10年を超えれば老齢基礎年金の受給資格を満たすこととしました。以下が合算対象期間となります。
合算対象期間 昭和36年4月1日より前の期間
これは国民年金という制度がそもそもなかった時代です。この時代は物理的に被保険者になる事が出来なかった為、以下のケースが合算対象期間となります。
- 第1号厚生年金被保険者期間及び船員保険被保険者期間の通算対象期間
通算対象期間とは昭和36年4月1日以降に公的年金の加入期間があり、かつ昭和36年4月1日前に同様の公的年金の加入期間がある場合に、それらの期間を合計して1年以上となる場合昭和36年4月1日前の公的年金加入期間も昭和36年4月1日以降のものと同様に合算対象期間とする制度です。
- 第1号厚生年金被保険者期間及び船員保険被保険者期間(昭和61年4月1日以降に保険料納付済期間、保険料免除期間を有した場合のみ)
- 第2号厚生年金保険者期間、第3号厚生年金被保険者期間、第4号厚生年金被保険者期間(共済組合の組合員期間)のうち通算対象期間
こちらは昭和36年4月1日以前から引き続いて被保険者だったもので1年以上のものに限る。
合算対象期間 昭和36年4月1日以降昭和61年4月1日前の期間
昭和36年より国民年金の制度がスタートしました。ですが、国民皆年金という形で始まりましたが学生や専業主婦等は任意加入でした。現在では学生や専業主婦であっても加入が義務となっています。
- 国民年金に加入することができたが加入していなかった期間
- 旧国民年金法の規定によって任意脱退の承認を受けて被保険者とされなかった期間
過去には受給資格期間の25年を満たすことが出来ず、国民年金を脱退する「任意脱退」の制度がありましたが平成29年8月より当該制度は廃止されました。
- 第1号厚生年金被保険者期間又は船員保険の被保険者期間で昭和36年4月1日以降の被保険者期間のうち20歳未満の期間及び60歳以降の期間
- 第1号厚生年金被保険者期間又は船員保険の被保険者期間のうち、脱退手当金の計算の基礎となった期間
大正15年4月2日以降生まれの者が昭和61年4月1日以降65歳に達する日の前日までに保険料納付済み期間又は保険料免除期間(学生納付特例等を含まない)がある場合に限る。
- 第2号厚生年金被保険者期間、第3号厚生年金被保険者期間又は第4号厚生年金被保険者期間(共済組合の組合員期間)における昭和36年4月1日以降の組合員期間のうち20歳未満の期間及び60歳以降の期間
- 第2号厚生年金被保険者期間、第3号厚生年金被保険者期間又は第4号厚生年金被保険者期間における新法施行日の前日において共済組合が支給する退職年金又は減額退職年金の年金額の計算の基礎となった期間であって、昭和36年4月1日以降の期間
これは昭和6年4月2日以降生まれに限ります
- 第2号厚生年金被保険者期間、第3号厚生年金被保険者期間又は第4号厚生年金被保険者期間における共済組合が支給した退職一時金(政令で定めるものに限る)の計算の基礎となった期間のうち昭和36年4月1日以降の期間
- 国会議員で会った期間のうち、昭和36年4月1日から昭和55年3月31日までの60歳未満の期間
- 昭和36年4月1日以降において日本国内に住所を有さず、かつ日本国政を有していた期間のうち、20歳以上60歳未満の期間
旧法では日本国内に住所が無ければ国民年金に加入することはできませんでした。
- 昭和36年5月1日以降、20歳以上65歳未満の間に日本国籍を取得した者の20歳以上60歳未満における、日本に住所を有していた期間のうち国民年金の被保険者とならなかった期間で昭和36年4月1日から昭和56年12月31日までの期間
- 昭和36年5月1日以降、20歳以上65歳未満の間に日本国籍を取得した者の20歳以上60歳未満における、日本に住所を有しなかった期間のうち、昭和36年4月1日から日本国籍を取得した日までの前日までの期間
以上のように定められています。なお、厚生年金保険においても合算対象期間と言われた場合は国民年金と同様の考えとなります。
合算対象期間は様々なものがあり、その定義を全て暗記するのはとても困難です。なので老齢基礎年金の受給権の有無を考えるうえで被保険者期間が10年に満たないからもらえないと安易に判断するのではなく、「合算対象期間というものがあった」という事だけを頭に入れ、その方の年齢問う条件と合算対象期間の定義をじっくり調べることをお勧めします。
今回はここまでです。ありがとうございました。