こんにちは。行政書士の石濵です。今回も内容証明について説明します。
前回は内容証明の簡単な説明と内容証明の効果を解説しました。内容証明は通常の郵便と同じように郵送され、”確かにこの内容の手紙の郵送を承りました”と郵便局が証明する点以上に法的に拘束力のあるものでない事は理解していただけたと思います。
今回は、内容に拘束力のない内容証明を利用する場面について、いくつか例を挙げて解説します。それではどうぞ。
① トラブルの発生が懸念される相手に確実に意思表示をしたい場合
民法第97条にて、意思表示は、通知が相手に到着した時にその効力が生ずるとあります。通常、普通郵便であっても投函すれば確実に相手に届く前提だと思います。それは間違いではありません。ですが、ごく稀に届かないケースも有るらしく、日本郵便株式会社HP内の「よくある質問」の中にも、不着の場合の対応が記載されています。
どのくらいの割合で不着が起こるのかのデータは存在しませんが、普通郵便の場合、意思表示の相手側に不着でない事の証明をすることは並大抵のことではありません。
また、通常通り届いたとしても、意思表示の相手に、文章の内容に関してしらばっくれられた場合も同様です。
郵送以外の方法について考えてみましょう。例えば電話での意思表示の場合、録音している場合は別として、後々”言った、言わない”の諍いになる可能性がありますし、録音している場合も相手が「自分の声ではない」と主張した場合は専門機関の鑑定等をせざるを得ない場合があるかもしれません。
電子メール、FAXにしても、”届かなかった”と言われるケースも少なくありませんし、そもそも「電子メールが相手サーバーに記録されたことをもって通知が到着したとみなすのは困難(東京地裁平成29年4月13日判決)」という判例もあります。
上記理由からトラブルに発展する危険を孕む契約事に対する意思表示やクーリングオフをする場合等は内容証明+配達証明を用いて確実な意思表示をすべきだと考えます。
② “信頼関係破壊の法理”成立の証拠として
法律用語で”信頼関係破壊の法理”というものがあります。不動産賃貸借でよく聞かれる言葉で、例えば借主の家賃滞納で貸主が契約を打ち切りたいと考えた場合、借主を保護する為に「1回や2回の滞納位で賃貸借契約を貸主の一存で打ち切っちゃだめだよ。その程度ならまだ仲直りできるよ。じゃないと借主が家なき子になっちゃうじゃん。完全に仲直りできなくなるまで契約は続行!」という感じの解釈で良いと思います。(違ったらホントすみません)
それでいて、貸主の「じゃあどれくらい滞納があれば一方的に契約破棄できるの」という問いには「ケース・バイ・ケース」といった具合で明確な基準がありません。そこで、「家賃滞納が続いている。○○までに家賃を払え。出なければ契約解除する」という内容証明で催告した証拠を残し、それでも家賃が払われない事をもって”信頼関係が破壊された”とするような使い方があります。
今回はここまでとします。次回は内容証明の具体的なルールに触れようと思います。またよろしくお願い致します。