こんにちは。行政書士/社会保険労務士の石濵です。今回は多くの人が興味を持っている最低賃金についての話をします。
僕は経営者時代に最低賃金と年次昇給のバランスでとても苦労した記憶があります。今回はその話も少し触れさせていただきます。興味がない場合は読み飛ばしてください。
経営者から見た最低賃金(僕の思い出)
僕は中小企業の代表を8年ほどやっていました。業種は飲食で若いアルバイトやご年配のパートさんを常時50名ほど(+正社員30名ほど)を雇用していましたが、アルバイトさん、パートさんが入社してきてすぐの時は殆ど最低賃金からスタートでした。そしてそこから特殊な能力(調理師免許所有者や日常的に運転業務を行う方など)以外は殆ど毎年10円~20円の時給アップがギリギリでした。
時給を上げる理由はさまざまだと思いますが、多くの場合は仕事を覚えた方に会社に長く定着してほしいという思いが強いのではないでしょうか。少なくとも僕はそう思っていました。僕が代表就任した前後(2010年前後)から数年は数円程度の最低賃金の上昇で、上昇した最低賃金を適用してもまベテランパートさんとの時給の差をつけることができました。
しかし、2013年からは2020年を除き毎年20円以上の最低賃金の上昇があり、新人とベテランで時給の差がつけにくくなってしまいました。ベテランからは「新人と同じ給与なら辞める」と何度も言われ、それでも急に売り上げを上げることができず、中々辛い想いをしました。まあ、思うように売り上げを上げられなかったのは全て僕のせいなんですけどね。
参考資料です。経営者から見たら上昇幅が大きく感じましたが、労働者から見ればそうでもあいのかもしれませんね。
労働者から見た最低賃金
当たり前ですが最低賃金の上昇は労働者と経営者では全く違った見方ができます。特に学生パートや年金受給者などは最低賃金の上昇が自らの賃金額の上昇にダイレクトに伝わるケースが多かったのではないでしょうか。20 当たり前ですが最低賃金の上昇は労働者と経営者では全く違った見方ができます。特に学生パートや年金受給者などは最低賃金の上昇が自らの賃金額の上昇にダイレクトに伝わるケースが多かったのではないでしょうか。少し古いデータですが、2019年の最低賃金上昇によって、全国で労働者の16.3%の労働者が、最低賃金上昇によって直接の賃金上昇があったというデータもあります。
最低賃金解説
最低賃金って何?誰が決めるの?
それでは最低賃金の具体的な話に移ります。最低賃金は1時間当たりの労働に対する報酬の最低額の事であり、各都道府県の労働局長が地方最低賃金審議会の審議、答申及びそれらの異議申し立てを経て決定しています。都道府県労働局長が定めるのですから当然都道府県によって差があります。
最低賃金の効果
最低賃金には以下の効果があります。
- 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金以上の賃金を支払わなければいけない
- 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めた場合、その部分は無効となり最低賃金と同額と定めたものとみなす
なお、上記1に反した場合は50万円以下の罰金という罰則規定があります。
最低賃金の特例(減額特例)
最低賃金は基本的に全ての労働者に適用されるものですが、以下のケースに該当し、かつ使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けた場合限定で減額した額を「仮の最低賃金額」として扱います。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
- 試みの使用期間の者
- 職業能力開発促進法の規定によって認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させるこを内容とする者を受ける者であって厚生労働省令で定める者
- 軽易な業務に従事するもの、断続的労働に従事する者
特定最低賃金(産業別最低賃金)
ここまで最低賃金の話をしてきましたが、上記で述べたのは”地域別最低賃金”です。このほかに”特定最低賃金”も存在し、こちらは地域+従事する産業によって賃金が決定されます。多くの場合は特定最低賃金は地域別最低賃金を上回るため、地域別最低賃金が真の最低賃金と言えます。
派遣労働者の最低賃金って
ここで扱う派遣労働者の最低賃金は、派遣元会社が労働者に支払わなくてはならない最低賃金を言います。派遣先会社が派遣元会社に支払う金額とは一切関係ありません。
また、派遣労働者の地域別最低賃金は派遣元会社の所在地によって決定されるわけではありません。あくまでも派遣される先によって地域別最低賃金を見ることとなります。
特定最低賃金(産業別の最低賃金)に関しても考え方は同様です。派遣されている労働者の職種は”人材派遣”ではなく実際に従事している産業を参照することとなります。
韓国の最低賃金
他国の最低賃金を見ていきましょう。お隣の韓国では近年に最低賃金が急上昇しました。2017年に6,470ウォン/時(660円強)っだのが2018年に16.4%、その次の2019年には10.9%も上昇し、現在では9,160ウォン/時(930円強)と5年間で270円以上も上昇しています。
但しこの政策は反動も大きく、失業率は2018年第1四半期は前期比0.8%増(3.3→4.1%)、2019年第1四半期は前期比0.7%増(3.5→4.2%)と上昇し、この政策は失敗だったと言われています。
世界の最低賃金
韓国のように最低賃金の上昇と同時に失業率の上昇を引き起こす可能性があり、労働者から見ても単純に上げればよいというわけではありません。ですが、日本の最低賃金は先進諸国でも最低ランクとなっています。
ですが、この最低賃金が国民の平均年収なんかと連動しているわけではありません。例えば平均年収が一番高いのはアメリカで約¥7,343,000ですが、最低賃金額№1のオーストラリアは約約5,841,000となり、平均年収の高い国ベスト5にも入りません。
今回はここまでです。ご覧頂きありがとうございました。